消費税率引き下げの影響

政府は8/5の臨時閣議で、飲食料品(酒類、外食を除く)の消費税率を2027年4月から2年間に限り、現在の8%から1%に引き下げる基本方針を決定した。さらに、1%相当の範囲内で中低所得者向けの給付を先行導入することで「実質ゼロ化を実現する」とし、秋の臨時国会に関連法案を提出する方針である。

食料品の消費税率を8%から1%に引き下げると、家計の負担は年間4.5兆円程度軽減される。これにより期待されるのは、物価の低下、個人消費、実質GDPの押し上げである。ニッセイ基礎研究所のマクロモデルによれば、食料品の消費税率を8%から1%に引き下げた場合、消費者物価(総合)は▲1.4%低下し、個人消費は0.7%、実質GDPは0.5%押し上げられる。

ただし、これは消費税率の引き下げ分(7%)が全て値下げに反映された場合の試算である。これまで日本では消費税率引き上げ時にほぼ100%価格転嫁されていたが、引き下げ時にそれが当てはまるとは限らない。また、これまでの消費税率引き上げはデフレ期に実施されることが多かったが、今回はインフレが定着し、値上げが日常的なものとなる中での税率引き下げとなる。企業が7%分をフルに値下げすることは考えにくいだろう。

ちなみに、コロナ禍で付加価値税率の引き下げが実施されたドイツでは、税抜き価格が引き上げられたことにより、税込み価格は税率引き下げ分ほど下がらなかった。

恒常的な所得と異なり、2年間の時限措置による一時的な所得は、貯蓄に回る割合が高いことにも注意を要する。過去の定額給付金や地域振興券のような一時的な所得の場合、消費にまわる割合は2~3割程度と試算されている。価格転嫁率を7割、物価下落に伴う実質所得増加のうち消費にまわる割合を3割程度とすれば、消費者物価(総合)は▲1.0%の低下、個人消費は0.3%、実質GDPは0.2%の押し上げとその効果はかなり小さくなる。

また、消費税率引き下げ前後には買い控えと反動増が発生することが想定される。飲食料品は生活必需品のため価格が多少変化しても消費量が変わりにくい、生鮮食品などは長期間保存できないといった理由で、自動車などの耐久財と比べて買い控えは発生しにくい傾向がある。ただし、米、缶詰、冷凍食品など保存可能でまとめ買いできる商品については、値下げが見込まれる減税後まで購入を先送りする動きが生じる可能性がある。

「家計調査」(総務省統計局)や「商業動態統計」(経済産業省)を用いて、過去の消費税率引き上げ時の動きを確認すると、食料の駆け込み需要は、耐久財を中心とするその他の財・サービスに比べれば小幅にとどまったものの、一定程度発生している。

消費税率引き下げ前には買い控えが発生する一方、消費税率引き下げ後には反動増に加え、消費者物価低下に伴う実質所得の上昇が消費を押し上げる。今回の見通しでは、民間消費は2027年1-3月期に食料品の買い控えで▲0.4%押し下げられる一方、4-6月期にはその反動で0.4%押し上げられると想定した。2027年4-6月期の民間消費は、反動増と実質所得増加の影響が重なることにより高い伸びとなることが見込まれる。消費税率引き下げ前後には消費の変動が大きくなることで、その基調が見極めにくくなることには注意が必要だ。