中東情勢の影響
2026年2月末の米国・イスラエルによるイラン攻撃と、その後のホルムズ海峡の事実上の封鎖は、中東への依存度が極めて高い日本の原油調達に大きな影響を与えた。
財務省の「貿易統計」で原油輸入の動向を確認すると、2026年3月は攻撃前にホルムズ海峡を通過・出港していた原油が日本に到着したため、影響はまだ限定的であったが、4、5月には2025年時点で輸入量の9割以上を占めていた中東産を中心に原油輸入量がそれぞれ前年比▲63.7%、同▲57.3%と急減した。その後、ホルムズ海峡を経由しない中東産に加え、米国を中心とした代替調達が進んだことから、6月の原油輸入量は前年比▲13.7%と減少幅が大きく縮小した。
2025年時点で中東産が約7割を占めていたナフサについては、中東からの輸入量は大幅な減少が続いているものの、米国やアルジェリアからの輸入量が急増するなど代替調達が進展している。原油輸入に占める中東の割合は2025年の94.0%から2026年6月には64.6%まで低下し、米国の割合が2025年の3.8%から2026年6月には30.9%まで上昇した。また、ナフサ輸入に占める中東の割合は2025年の73.8%から2026年6月には17.3%まで急低下する一方、米国の割合が26.0%、アルジェリアの割合が18.8%まで急上昇している(数値はいずれも数量ベース)。

価格面では、ドバイ原油の市況価格は3月に1バレル130ドル近く(月中平均)まで急上昇した後、4、5月は100ドル台で高止まりしたが、6月以降は80ドル前後まで低下している。一方、通関(入着)ベースの原油価格は、3月の1バレル60ドル台から4月に100ドル台、5、6月に110ドル台まで急上昇した。原油の輸入量が持ち直す中、輸入価格が大幅に上昇したため、原油の輸入金額は6月には前年比で増加に転じた。

もともと、通関ベースの原油価格は、指標価格に調整金、タンカー運賃、保険料などが上乗せされているが、中東情勢緊迫後は調整金、タンカー運賃が大幅に上昇したこと、代替調達先の米国からの輸入価格が中東を大きく上回っている1ことなどから、市況価格との差が大きく拡大している。代替調達がさらに進展するもとでは、原油の輸入価格が市況価格ほど低下せずに、貿易収支の悪化につながることが見込まれる。
原油をはじめとする資源価格の上昇は交易条件の悪化を通じて海外への所得流出をもたらし、企業収益の悪化、家計の実質購買力の低下につながる。
今回の見通しでは、中東情勢を巡る緊張が徐々に和らぎ、原油価格が緩やかに低下することをメインシナリオとしている。具体的には、原油価格(WTI)は2026年4-6月期の1バレル90ドル台から7-9月期に80ドル程度、10-12月期に70ドル台後半、2027年入り後に70ドル台前半まで低下することを前提としている(2026年度平均は1バレル81ドル、2027年度平均は71ドル)。

ただし、タンカー運賃や調整金の上昇等を踏まえると、通関ベースの原油価格はWTIやドバイ原油を大きく上回ることが見込まれる(通関ベースの原油価格は2026年度が95ドル、2027年度が81ドルと予想)。
原油価格の大幅上昇を主因として、GDP統計の輸入デフレーターは前年比18.1%と輸出デフレーターの同11.5%を大きく上回るだろう。この結果、2026年度のGDP交易利得は2025年度から▲6.1兆円(対GDP比で▲1.0%)悪化すると予想する。