絶望的なテープ切断と、女子大学生の奮闘

川幡氏が解析したフライトレコーダーは、機体の状態を記録するデジタル式の飛行記録装置だ。エンジン出力や操縦桿の操作量など64項目に及ぶ物理データと、スイッチなどのオン・オフ状態を示す33個のデータが、当時は磁気テープに記録されていた。しかし、激しい衝撃を受けた磁気テープはしわだらけになり、一部は切断されていた。最も重要な「異常発生時」のデータは、解読不能なエラーとなっていた。アメリカの製造メーカーの機器にかけても完全な修復は不可能だった。

川幡氏に残された手段は、途方もないアナログ作業だった。エラーとなった波形からノイズを取り除き、人間の目で「0」と「1」の信号をひとつずつ拾い上げる。1秒間=1センチのデータは、2.3メートルにも及ぶロール紙となって拡大プリントされた。「1ビット」の波形が、わずか3ミリの長さに引き伸ばされた。人間の目で何とか確認できるサイズだった。これを判読していく地道な作業を担当したのが、アルバイトとして雇われた東京女子大学の数学専攻の女子大学生だった。

川幡長勝氏
「事故調査の作業は秘密厳守のため、特別な場合を除き第三者には依頼しません。彼女は数学専攻で、航空の知識がなかったことがかえって都合がよかったのです」

※女子大学生が記した「0」と「1」の信号 2026年4月 筆者撮影

先入観を持たない女子大学生は、静かな研究室でひたすらデータの区切りを発見し、波形の境界を確定していった。この地道な手作業が、惨事の真実を浮かび上がらせることになる。