「事実(Fact)」を未来へ繋ぐ
川幡氏が日航に資料を寄贈してから3か月が経った2026年4月。川幡氏は、123便の機体の残骸などが保管されている日航安全啓発センターを初めて訪問した。 川幡氏にとって、実物の圧力隔壁や機体の残骸を目にするのは、40年ぶりのことだ。フライトレコーダーの磁気テープが格納されていたブラックボックスとも久しぶりの対面となった。自らが「0」と「1」の波形を通して格闘した機体の残骸を前に、川幡氏は何を想ったのか。
川幡長勝氏
「垂直尾翼の破断部を間近に見たのは初めてです。亡くなられた方々のメモ書きを読んだのも初めてでした。自分だったら最後に何を書いただろうか。何か書き残そうとさえ思わなかったかもしれません」
科学者として真実を探求し続けた川幡氏は、根拠のない非科学的な言説に対して強い違和感を抱いている。しかし、彼が今最も望んでいることは、抽出された客観的事実が、正しく次の世代へと引き継がれることだ。
川幡長勝氏
「事故調査は、データに基づく合理的推測しかできません。異なる主張があれば、各種データ間の合理的関連を矛盾の無いよう、慎重に読む必要があります。憶測だけで語ることは、余計な問題を生じさせると思います」
ブラックボックスをこじ開け、導き出された「1秒間の真実」。あの日のデータが刻まれたロール紙は、惨事の記憶と記録を未来へ繋ぐ「証」として、今も生き続けている。