・生命保険のAI相談は、消費者の金融知識により求める安全機能が異なる。
・知識が浅い層は有人対応を重視。ただ、潜在的リスクの把握は困難である。
・金融庁や欧州(EU)も注視。消費者が気づかぬリスクへの備えが不可欠である。
「何を確認すべきか」「どこにリスクがあるか」を知らなければ、安全を求めることは難しい
生命保険のAI相談に対して、生活者が何を求めているのかについて、調査で支持されているのは、いつでも相談をやめられること、入力した情報を削除できること、おすすめ以外の選択肢も確認できること、必要なときに人へ相談できることでした。生活者はAIに判断を丸ごと預けるよりも、その助けを借りながら、自分で確かめて選びたいと考えているようです。
その一方で、「自分で選べる仕組み」が用意されたとしても、何を確認すべきか、どこにリスクがあるのかを知らなければ、安全機能を求めること自体が難しい面もあります。
また、ある研究では、AI等のアルゴリズムによる助言の消費者の受け止め方が、消費者自身の専門性によって変わることも示されています。これらを踏まえて、今回は、金融商品の理解や判断に対する自信と、AI相談に求める条件との関係を分析しました。
金融理解とAI相談に求める条件/「自信が高い」層の傾向
最初に、ニッセイ基礎研究所の調査(n=4000)の結果を用いて「金融商品について他人より詳しい」「専門用語を理解できる」「経済動向を踏まえて購入時期を判断できる」という3つの回答から、「金融商品の理解や判断に対する自信」を得点化しました。
その金融理解・判断への自信とAI相談を利用しやすくする条件項目との関係を見たのが表1です。
「金融理解・判断への自信」の平均得点が高い層(高群)・中ぐらいの層(中郡)、低い層(低群)を分割して、それぞれの傾向と、残差判定で有意な差が見られるかどうかを確認してみましょう。

これを見ると、金融理解・判断への「自信の高い層(高群)」では、「相談情報を保険料の割増や加入拒否に使わないと明記する」(TOP1+2で39.0%)、「AIが最適な1つに絞って提示する」(同32.8%)といった項目が高い傾向であることがわかりました。
金融理解への主観的な自信と、AI相談の回答内容や選択肢の示し方、データ利用に関する開示のあり方との間に、一定の関連があることがうかがえます。
なお、これらの層別割合は単純集計であり、回答者の性別・年代の構成差を調整していません。
一般的に、性別や年代によって、金融経験やAI相談への評価水準が異なる可能性があり、ニッセイ基礎研究所の別の調査でもその傾向が示されています。
そこで、性別・年齢の構成差による見かけ上の関連を抑え、金融理解得点との平均的な関係を捉えるため、上記以外に二値ロジスティック回帰という手法を使って、別途、性別・年代を考慮した回帰分析を行ったところ、単純集計結果と同様に金融理解との関連が確認されています。
金融理解とAI相談に求める条件/「自信が低い」層の傾向
同様に、金融理解への「自信が低い層」を見ると、人への切替えや利用中止、情報削除、複数選択肢の表示といった項目が「あると(AI相談を)利用しやすくなる」と評価されています。金融知識に自信のない人は、そもそもAI相談の安全機能に無関心という結果にはなっていません。
特に、人への切替えや利用中止は、消費者にとっても分かりやすい機能です。不安になったら止める。困ったら人に尋ねる。画面上のボタンを押せば、その場で行動に移せます。
一方、相談中に入力した情報が、その後どこへ送られ、何の判断に使われるのかは一般的な消費者からは簡単には見えません。
家族構成、収入、健康上の不安などを伝えたとき、その情報は相談だけに使われるのでしょうか。営業活動や提案にも使われるのでしょうか。正式な申込や引受判断まで引き継がれるのでしょうか。
AIによる推薦にも、同じ問題があります。表示された商品は確認できますが、候補から外れてしまった商品は見えません。なぜその商品が上位になったのか、販売方針や手数料がどのように関係しているのかも、利用者からは捉えにくい部分です。
この違いは、「見えやすい安全」と「見えにくい安全」として整理できます。

たとえば、「自信が高い層」は「AIが最適な1つに絞って提示する」を比較的高く評価する一方、「自信が低い層」では「AIが複数の選択肢を提示する」が最も高くなっています。
AI相談では、どの基準で商品が選ばれ、何が候補から外れたのかが、利用者には見えにくい面があります。そのため、推薦理由を示し、ほかの選択肢も確認できるようにする配慮が欠かせません。
今回の結果からは、特に「自信が低い層」では、AIに一つの結論へ絞り込んでもらうよりも、複数の候補を見ながら判断材料を確保したいという傾向が表れている可能性があります。