・生成AI普及等により、データセンター需要が量・質ともに急拡大。
・東京・大阪の集中リスクを回避し、地方への機能分散が急務である。
・安定整備と地域共生に向け、インフラ一体化や地元との対話が鍵である。
はじめに
データセンターは、サーバー、ストレージ、ネットワーク機器等を集約し、データの保存、処理、送受信を担う施設である。動画配信、電子商取引、オンライン会議、企業の基幹システム、行政サービス、生成AIなど、今日の社会経済活動の相当部分は、データセンターを前提として成立している。したがって、データセンターは単なるIT事業者の設備ではなく、電力、通信、物流、金融と同様に、社会機能を支える基盤インフラとして捉える必要がある。
日本におけるデータセンターをめぐる論点は、大きく二つに整理できる。第一は、通信トラヒックの増加、クラウドサービスの普及、生成AIの利用拡大等を背景として、データセンター需要が拡大している点である。第二は、その受け皿であるデータセンターの立地が東京圏・大阪圏に大きく偏っている点である。需要が拡大する一方で立地が偏在する場合、平時には効率的であっても、大規模災害、広域停電、通信障害、電力供給制約等の局面で脆弱性が顕在化しやすい。
本稿の目的は、データセンター建設の必要性を、需要拡大と立地偏在という二つの現状から基礎的に整理し、今後の政策的・地域的課題を検討することにある。具体的には、まず通信トラヒックの意味を確認したうえで、固定系ブロードバンド・トラヒックの長期的増加と、その増加がデータセンター需要へ波及する経路を整理する。次に、デジタル化と生成AIが需要の質をどのように変えているかを確認する。そのうえで、データセンターの大都市圏集中の実態と背景を整理し、BCP、レジリエンス、電力・土地制約、地域社会との合意形成という観点から、立地分散の意義を考察する。
通信トラヒックの増加とデータセンター需要
1|通信トラヒックとは何か
データセンター需要を把握するうえで最も基礎的な指標の一つは、インターネット上を流通する通信トラヒックである。通信トラヒックとは、一定時間にネットワーク上を通過するデータ量を指す。総務省の公表資料では、固定系ブロードバンド契約者の総ダウンロード・トラヒックなどがTbpsという単位で示される。Tbpsは「1秒当たり何テラビットのデータが流れているか」を表す流量の単位であり、サーバーやストレージに保存されているデータ容量そのものではない。たとえば、2025年11月の約44.6Tbpsという水準は、単純換算すれば1秒当たり約5.6テラバイトのデータが流れる規模である。
この点は、データセンター需要を説明する際に重要である。通信トラヒックは、利用者が動画を見る、写真やファイルを送受信する、クラウド上の業務システムを使う、ソフトウェアを更新する、オンライン会議に参加する、生成AIに入力して応答を受け取るといった行為の積み重ねとして発生する。したがって、トラヒックの増加は、通信回線の利用増加を示すだけでなく、その背後でデータを保存し、処理し、配信する設備への負荷が高まっていることを示す。
通信トラヒックには、固定系ブロードバンドと移動通信、ダウンロードとアップロードという区分がある。固定系ブロードバンドは、主として家庭や事業所に設置された光回線、CATV、FWA等を通じた通信であり、動画視聴、オンライン会議、クラウド利用、ゲーム、ソフトウェア更新など大容量通信の中心となる。移動通信はスマートフォン等を通じた通信であり、外出先での動画視聴、SNS、地図、決済、アプリ利用などを支える。ダウンロードは利用者がコンテンツやデータを受け取る方向の通信であり、動画配信やWeb閲覧の増加を反映しやすい。アップロードは写真・動画の投稿、クラウドバックアップ、オンライン会議の映像送信、企業システムへのデータ送信などを反映する。
本稿では、データセンター需要との関係をみるうえで、固定系ブロードバンドのダウンロード・トラヒックに着目する。家庭やオフィスで消費される大容量コンテンツの多くは、クラウド事業者、コンテンツ配信事業者、動画配信事業者、ソフトウェア事業者等のサーバーから配信されるためである。ただし、通信トラヒックはデータセンター需要そのものではない。通信量には、通信事業者のネットワーク内で処理されるもの、キャッシュサーバーを経由するもの、海外のデータセンターと接続するものなどが含まれる。したがって、通信トラヒックは、データセンターの床面積やサーバー台数を直接示す指標ではなく、データセンター需要の拡大を読み取るための代理指標として位置付けるのが適切である。
2|固定系ブロードバンド・トラヒックの長期的増加
総務省「我が国のインターネットにおけるトラヒックの集計・試算」によれば、固定系ブロードバンドサービス契約者のダウンロード・トラヒックは長期的に増加している。2012年11月時点では約1.9Tbpsであったが、2016年11月には約8.3Tbps、2021年11月には約23.7Tbps、2024年11月には約38.9Tbpsとなり、2025年11月には約44.6Tbpsへ拡大した。2012年11月を100とした場合、2025年11月の指数は約2,347となる。約13年間で23倍超に増えた計算であり、通信量の増加が一時的な現象ではなく、長期的な構造変化であることが分かる。

2025年11月の約44.6Tbpsという水準は、平均的な流量を示すものである。実際のサービス設計では、平均値だけでなく、時間帯別のピーク、曜日差、年末年始や大型イベント時の集中、災害時や障害時の迂回通信なども考慮する必要がある。動画視聴やゲーム更新、スポーツ中継、OS更新などは特定時間帯に需要が集中しやすい。データセンターや通信ネットワークは、平均的な通信量だけではなく、ピーク時の利用に耐えるように設計されるため、トラヒックの増加は設備余力の確保を一段と重要にする。
また、トラヒック増加を解釈する際には、少なくとも三つの点に留意する必要がある。第一に、トラヒックは「保存されているデータの量」ではなく「流れているデータの量」である。同じ動画ファイルであっても、多くの利用者に繰り返し配信されればトラヒックは増える。第二に、平均トラヒックが増加する場合、ピーク時の処理能力も高める必要がある。利用者は夜間や休日など特定時間帯に集中しやすく、サービス提供者は平均値ではなくピーク需要に耐えられる設備を確保しなければならない。第三に、トラヒック増加はネットワークだけでなく、サーバー、ストレージ、ロードバランサー、CDN、セキュリティ機器、監視システム、バックアップ設備など、データセンター内外の複数設備に連鎖的な負荷を与える。
したがって、通信トラヒックの増加は、通信事業者の回線増強だけで吸収できるものではない。コンテンツを利用者の近くに置くCDN、クラウドサービスを支えるサーバー、ソフトウェア更新を配信する基盤、企業データを保存するストレージ、障害時の復旧に備える冗長構成などが同時に必要となる。すなわち、トラヒック増加は、ネットワークの混雑問題であると同時に、データセンターの容量、電力、冷却、運用体制の問題でもある。
3|通信トラヒック増加の背景
固定系ブロードバンド・トラヒックの増加には、複数の需要要因が重なっている。第一に、動画配信の普及と高画質化である。動画はテキストや静止画に比べてデータ量が大きく、解像度の向上、同時視聴、長時間視聴、ライブ配信の普及は、ダウンロード・トラヒックを押し上げる。第二に、クラウドサービスの利用拡大である。企業や個人がファイル、写真、業務アプリケーション、会計・人事・営業支援システムをクラウド上で利用するほど、端末とデータセンターの間で継続的に通信が発生する。第三に、オンライン会議や遠隔授業、リモートワークの定着である。オンライン会議は映像と音声を双方向で送受信するため、ダウンロードだけでなくアップロードも増加させる。第四に、ソフトウェアのクラウド化と更新頻度の上昇である。OS、アプリ、ゲーム、セキュリティソフトの更新は大容量化しており、多数の端末に同時配信されることで通信量を増やす。第五に、電子商取引、電子決済、行政手続、医療・教育・金融サービスのオンライン化である。これらは一回当たりの通信量が動画ほど大きくない場合でも、利用頻度が高く、かつ高い可用性と安全性を求めるため、データセンターへの依存度を高める。近年は、生成AIの利用拡大も新たな要因となっている。生成AIは、学習段階で大量のデータと演算能力を必要とするだけでなく、利用者からの入力に応じて応答を生成する推論段階でも、サーバー側の計算資源を消費する。生成AIの利用は、単に通信量を増やすだけではなく、GPU等の高性能演算装置、広帯域の内部ネットワーク、高密度ラック、強力な冷却設備、安定した電力供給を必要とする。したがって、生成AIは、トラヒックの量的増加に加え、データセンターの設備仕様を高度化させる要因である。
4|通信トラヒックからデータセンター需要への波及経路
通信トラヒックの増加がデータセンター需要に結び付く経路は一つではない。第一の経路は、保存容量の拡大である。写真、動画、業務文書、ログ、センサー情報、バックアップデータなどの蓄積が増えるほど、ストレージ需要は増加する。第二の経路は、処理能力の拡大である。データは保存されるだけでなく、検索、変換、圧縮、暗号化、分析、AI処理、セキュリティ検査などの対象となるため、CPU、GPU、メモリ等の計算資源が必要となる。
第三の経路は、配信能力の拡大である。動画、ゲーム、ソフトウェア更新、Webサービスなどは、多数の利用者に同時に配信される。安定した配信には、データセンター内のサーバーだけでなく、CDN、キャッシュ、負荷分散、複数拠点への分散配置が必要となる。第四の経路は、可用性と冗長性の確保である。社会のデジタル化が進むほど、サービス停止の影響は大きくなる。そのため、同じデータや処理機能を複数拠点に持たせる、バックアップを遠隔地に置く、障害時に別拠点へ切り替えるといった設計が求められる。これらは、単純な通信量以上にデータセンター需要を押し上げる。
第五の経路は、セキュリティ・監視需要の拡大である。通信量が増えるほど、不正アクセス、DDoS攻撃、マルウェア、情報漏えい、偽・誤情報の拡散などへの対策も重要になる。ログの収集・保存・分析、通信監視、認証、暗号化、バックアップ、災害復旧は、いずれもデータセンター内外の設備を必要とする。したがって、トラヒック増加は単に「より多くのデータが流れる」という現象ではなく、データを安全に、継続的に、低遅延で処理するためのインフラ需要を拡大させる現象である。
5|指標としての限界と意義
通信トラヒックをデータセンター需要の根拠として用いる場合、指標としての限界も明確にしておく必要がある。第一に、トラヒックは国内データセンターだけで処理される通信を表すものではない。海外のクラウドサービス、海底ケーブル、国内外のCDN、通信事業者のキャッシュを経由する通信が含まれる。第二に、トラヒックは床面積、ラック数、電力容量、サーバー台数を直接示さない。第三に、トラヒックが増加しても、圧縮技術、キャッシュ技術、ネットワーク効率化、サーバー性能向上によって、必要設備量の増加幅は変わりうる。
しかし、これらの限界を踏まえても、通信トラヒックは重要な指標である。なぜなら、社会経済活動がどの程度デジタル空間に依存しているかを、時系列で把握できるためである。通信量が継続的に増加しているという事実は、データを保存・処理・配信する基盤への依存が高まっていることを示す。したがって、データセンター建設の必要性を説明する際には、通信トラヒックを単なる数値として掲げるのではなく、指標の意味、増加要因、ピーク対応、冗長化、電力・冷却需要との関係を合わせて説明することが重要である。
デジタル化・生成AIがもたらす需要の質的変化
通信トラヒックの増加は、データセンター需要の量的拡大を示す。一方で、近年の特徴は、需要の質も変化している点である。企業では、会計、人事、営業支援、在庫管理、顧客管理、設計・開発、セキュリティ監視など、多様な業務がクラウド環境で処理されるようになった。行政でも、申請、届出、情報提供、住民サービスの電子化が進んでいる。消費生活の面では、動画配信、ネット通販、SNS、ゲーム、電子決済が日常的なサービスとなり、利用者一人当たりが扱うデータ量も増加している。
さらに、生成AIの利用拡大は、データセンターに求められる機能を大きく変えている。AIの学習や推論には、高性能な演算装置を備えたサーバー群、安定した大容量電力、効率的な冷却設備、低遅延かつ大容量の通信網が必要となる。従来型のデータ保存・配信を中心とした設備に比べ、AI向けデータセンターは、電力密度や冷却負荷が高くなりやすい3。このため、データセンター需要は、施設面積やサーバー台数だけでなく、電力、冷却、通信ネットワークを含む総合的なインフラ需要として把握する必要がある。
この点で、データセンター整備は情報通信政策にとどまらない。電力系統、脱炭素電源、産業立地、地方創生、防災、環境負荷といった複数の政策領域にまたがる課題である。需要増加への対応を施設整備だけの問題として捉えるのではなく、どこに、どのような電源・通信網と組み合わせて整備するかという立地政策として検討することが重要である。
データセンター立地の偏在
1|東京圏・大阪圏への集中
需要が拡大する一方で、国内のデータセンターは全国に均等に立地しているわけではない。資源エネルギー庁『エネルギー白書2025』では、2023年時点で日本全国のデータセンターの約90%が、面積換算で関東と関西に集中していると整理されている。定義や集計方法には違いがあるものの、いずれの資料も、大都市圏への集中が極めて大きいことを示している。
2|集中を生む立地要因
データセンターが東京圏・大阪圏に集中してきたことには、一定の合理性がある。第一に、これらの地域には企業、行政機関、金融機関、消費者向けサービス事業者など、大口のデータ需要が集積している。需要地に近い立地は、通信遅延を抑え、安定したサービス提供を行ううえで有利である。第二に、通信回線、インターネット接続点、クラウド事業者、システム運用人材が集積しており、既存インフラを活用しやすい。第三に、電力や建設関連の調整を含め、既に多くの施設整備の経験が蓄積されている。
したがって、現在の大都市圏集中は、単に過度な偏在というだけではなく、これまでの需要地近接型の立地合理性を反映した結果でもある。しかし、需要拡大と施設の大型化が進むなかでは、従来の合理性がそのまま将来の最適解になるとは限らない。通信遅延が重要となる用途では大都市近接の意義は残る一方、バックアップ、アーカイブ、AI学習、広域分散処理など、必ずしも都心近接を必要としない用途も存在するためである。
3|偏在がもたらすリスク
立地の偏在は、主に三つのリスクをもたらす。第一は、災害・障害リスクである。大規模地震、風水害、広域停電、通信障害が大都市圏で発生した場合、同じ地域に集積するデータセンターが同時に影響を受ける可能性が高まる。データセンターは冗長化を前提に設計されるが、地域単位で集中している場合、施設単位の冗長化だけでは十分でない場合がある。
第二は、電力・土地・水資源等の制約である。データセンターは大容量の電力を継続的に必要とし、空調・冷却設備も不可欠である。需要が既に集積する地域で大型施設を追加整備すれば、電力系統、用地、産業用水、建設人材の制約が強まる可能性がある。第三は、地域受容のリスクである。データセンターは公害型施設ではないものの、大規模な電力消費、景観、排熱、騒音、土地利用、地域雇用への寄与の小ささなどを理由に、地域住民から懸念が示されることがある。
このように、データセンターの集中は、平時の効率性を高める一方、非常時の脆弱性や地域資源の制約を拡大させる側面を持つ。したがって、今後の議論では、単に需要増に応じて施設を増やすのではなく、どの機能をどの地域に配置することが社会全体として合理的かを検討する必要がある。
立地分散の意義と課題
1|BCP・レジリエンスの観点
立地分散の第一の意義は、BCPとレジリエンスの強化である。BCPとは、災害や障害が発生しても重要な業務やサービスを継続できるようにする考え方である。レジリエンスとは、障害発生時の被害を抑え、早期に回復できる能力を指す。データセンターが特定地域に集中したままであれば、広域災害時にデジタル基盤全体への影響が大きくなりやすい。
もっとも、立地分散は、東京圏・大阪圏からデータセンターを単純に移転することを意味しない。需要地に近い拠点は引き続き必要である。重要なのは、東京圏・大阪圏を補完・代替できる地域拠点を整備し、用途に応じて機能を分けることである。低遅延を要するサービスは需要地近接型、バックアップや分散処理は地方拠点型、AI学習や大規模演算は電力・冷却条件に優れた地域型といった形で、機能別に立地を組み合わせることが考えられる。
2|電力・脱炭素・地域資源の観点
立地分散の第二の意義は、電力・脱炭素・地域資源の観点にある。データセンターは電力多消費型の施設であり、生成AIの利用拡大に伴って、電力需要は一段と高まる可能性がある。大都市圏に電力需要が過度に集中すれば、系統増強や電源確保の負担が増す。これに対し、再生可能エネルギー、未利用地、産業用水、冷涼な気候など、地域ごとの条件を活用できれば、電力負荷の分散と施設運営の効率化につながる。
資源エネルギー庁は、データセンターの国内立地を加速するうえで、電力インフラと通信インフラを効率的に連携させる「ワット・ビット連携」の考え方を示している3。これは、電力を大量に消費するデータセンターの立地を、通信網だけでなく電源や系統の条件とあわせて考える発想である。今後のデータセンター整備では、通信の利便性と電力の安定供給、脱炭素化、地域資源の活用を同時に考慮する必要がある。
3|地域受容とNIMBY化の回避
立地分散を進めるうえで不可欠なのが、地域社会との合意形成である。データセンターは、廃棄物処理施設や発電所のような典型的な迷惑施設とは異なる。しかし、地域住民から見れば、大量の電力を消費する施設が建設されること、景観が変化すること、交通量や工事負担が生じること、地域雇用や税収への効果が見えにくいことは、懸念材料となりうる。必要性は理解されても、自地域への立地には慎重な姿勢が示されるという点では、自分の居住地域の近くに作られることには反対するNIMBY(Not In My Back Yard)となる可能性を持つ。
NIMBY化を回避するには、事業者や行政が、データセンターの役割を抽象的に説明するだけでは不十分である。地域にとっての便益と負担を具体的に示す必要がある。たとえば、災害時の通信・行政サービス維持への貢献、地域再エネの活用、余熱利用、地元企業との取引、固定資産税等による財政効果、デジタル人材育成、地域の通信環境改善などである。同時に、事業者には電力使用量、環境負荷、排熱、騒音、景観、工事期間中の影響などについて、住民が理解できる形で開示することが求められる。
地域受容を高めるうえでは、早期の情報提供も重要である。計画がほぼ固まった段階で説明を行うのではなく、立地検討の初期段階から自治体、住民、電力会社、通信事業者、地域企業との対話を行うことが望ましい。データセンターを地域に負担をもたらす施設としてではなく、地域の防災力、産業基盤、脱炭素化に資する施設として位置付けられるかどうかが、今後の立地分散の成否を左右する。
おわりに
本稿では、データセンター建設の必要性について、通信トラヒックの増加と立地偏在という二つの現状から整理した。第一に、固定系ブロードバンドのダウンロード・トラヒックは長期的に増加しており、2025年11月には約44.6Tbpsに達した。重要なのは、この数値が単なる通信量の増加を示すだけではない点である。トラヒックの増加は、データの保存、処理、配信、冗長化、セキュリティ監視、バックアップといったデータセンター機能への需要拡大を反映している。
第二に、クラウド利用や生成AIの拡大により、データセンターへの需要は、単なる保存容量だけでなく、演算能力、電力、冷却、通信網を含む総合的なインフラ需要として拡大している。第三に、国内データセンターは東京圏・大阪圏に大きく集中しており、平時の効率性の一方で、災害時の脆弱性や電力負荷の偏在という課題を抱えている。
これら課題に対する今後の方向性は、東京圏・大阪圏の機能を否定することではなく、それらを補完・代替する地域拠点を整備し、用途に応じた分散配置を進めることである。低遅延が求められるサービス、バックアップ、AI学習、大規模データ処理など、機能ごとに適した立地条件は異なる。電力・通信インフラを一体で考え、地域資源を活用しながら、デジタル基盤の強靭化を図る必要がある。
ただし、立地分散は、政策的必要性を示すだけでは進まない。地域住民にとって、データセンターがどのような役割を果たし、どのような負担と便益をもたらすのかを明確に説明し、合意形成を積み重ねることが不可欠である。データセンターは、デジタル社会を支える基盤であると同時に、地域社会の土地、電力、環境、景観と結びついた施設である。したがって、今後の課題は、需要増加への対応、レジリエンス強化、脱炭素化、地域共生を一体的に進めることにある。
(※情報提供、記事執筆:ニッセイ基礎研究所 社会研究部 研究員 島田 壮一郎 )

