GPIFや年金基金を巡る片山氏の発言は市場を牽制するものではない公算
7月10日の市場では、片山財務相が「年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)など年金基金による国内投資を後押しすると発言した」(ロイター)ことが注目され、「国内債券などへの投資拡大の連想が強まり、市場は円高・債券高で反応」(同)した。
GPIFなど年金基金の動向は市場に大きな影響を与えることから、市場では注目されたが、どうやらオルタナ投資の上限について現状の2%未満から、上限とされる5%に向けて運用の高度化を進めるという議論が背景にあったようである。
日経新聞は7月11日、「GPIFオルタナ投資『上限5%に向けて』拡充 政府の金融戦略に明示へ」と報じ、「資産全体の5%に向けてリスク管理や運用の高度化を進める」という方針が、日本成長戦略会議の下に設置した資産運用立国推進分科会が月内にもまとめる「成長投資を促進するための金融戦略」に盛り込まれるとした。
「国債や上場株を対象としていない」(日経新聞)とされるオルタナ投資の拡充ということであれば、直接的に株価や金利に与える影響は限定的だろう。また、片山財務相の発言内容に鑑みると、外貨資産を減らして国内のオルタナ投資に振る向ける動きもありそうだが、オルタナ投資は急激に増やすことは難しいと考えられ、為替相場に与える影響も限定的だろう。
そもそも、片山氏の発言は成長投資の成果を金融面でどのように享受できるのか?という趣旨の質問に対する回答の中で出てきたものである。片山氏は株価が堅調であることに触れ、家計への恩恵を強調した上で、「そしてGPIFをはじめとする年金基金による日本の金融資産にさらなる投資をしていただくという方向で後押しをする方策を追求したいというふうに考えております」(時事通信)と述べた。
家計の保有する株式や年金資産の価値向上という形で、国民にも経済成長の恩恵があると伝えたかったのだろう。円高・金利低下という市場の反応は、片山氏が意図しないものだった可能性が高い。
仮に、GPIFや年金基金を用いて円安や金利上昇を止めなければならないという動きがあるのであれば、それはかえって日本円や日本国債の本源的な価値について疑問を投げかける動きと言える。政策では市場をコントロールすることができないため、需給面から市場を動かそうという姿勢は市場で評価される可能性は低く、火に油を注ぐ結果になりかねない。
そのように考えると、今回の片山氏の発言に対する市場の受け止めは、やはり意図しないものだった可能性が高い。骨太の方針2026の記述を巡る混乱が同時に生じていることを勘案すると、政府と市場のミスコミュニケーションが生じやすい状況にあることは懸念材料だが、GPIFや年金基金のアロケーションを巡る議論が長期化することはないだろう。
(※情報提供、記事執筆:大和証券 チーフエコノミスト 末廣徹)