世界で高い評価を受けるオーストラリアの年金制度に、新たな有力支持者が現れた。トランプ米大統領だ。

子ども向け資産形成制度「トランプ口座」に対する世論の高い関心を追い風に、トランプ氏は先週、親や祖父母世代の年金制度に目を向けた。そして、米国の年金制度改革に向け、企業拠出を義務付ける豪州の私的年金制度「スーパーアニュエーション」を参考に検討する考えを示した。

トランプ氏はここ数カ月、スーパーアニュエーションを繰り返し高く評価している。先週には、米年金制度の拡充に向けて議会と進める協議の一環として、ベッセント財務長官とラトニック商務長官に対し、豪州の制度を調査するよう指示したことも明らかにした。

6日には、数年前から豪州の制度を支持してきた米資産運用会社ブラックロックのラリー・フィンク最高経営責任者(CEO)とも会談し、「豪州には多くの人から支持されている制度がある。実際に非常にうまく機能している」と述べた。そのうえで、「議会と協議し、導入できるか検討していく」と語った。

約3兆1000ドル(約501兆円)規模へと急成長した豪州の年金制度は、資産運用会社や年金政策の専門家から羨望(せんぼう)のまなざしを集めてきた。豪州では1990年代初め、企業に対し、従業員の賃金に上乗せして民間運営の年金へ拠出することを義務付ける法律が制定された。

拠出率は徐々に引き上げられ、現在はパートタイム労働者も含め給与の12%となっている。この制度は今後10年以内に規模で世界2位の年金制度になる見通しだ。

一方、米国では年金制度を巡る問題が深刻化している。社会保障の信託基金は2032年に枯渇する見通しで、その場合、約束している給付の大幅削減を迫られる。

公的年金以外でも、多くの労働者は老後資金を十分に確保できていない。米バンガード・グループが運営する確定拠出型年金401kプラン加入者500万人では、昨年の残高中央値は4万4115ドルにとどまった。さらに、民間部門で働く労働者の約4割は、こうした制度そのものを利用できない。

こうした状況を踏まえると、高い拠出率を義務付け、パートタイム労働者まで対象を広げ、制度への資金拠出や運営を民間に委ねる仕組みが政治家にとって魅力的に映るのも理解できる。

米共和党のクルーズ上院議員は8日、X(旧ツイッター)への投稿でトランプ氏の発言を歓迎し、「まさにその通りだ」と表明した。

クルーズ氏は、「バーテンダーからギグワーカーまで、すべての米国民が資産を築き、アメリカンドリームを実現し、わが国の繁栄を共有できるようにする法案の準備を進めている」と説明した。

もっとも、年金制度の専門家は、豪州の制度が米国にとって容易な解決策にはならないとみている。仮に社会保障制度を置き換えるとしても、給与税を主な財源として既に約束している給付をどう賄うかという課題が残る。

また、企業の拠出義務化には経済界の強い反発も予想される。豪州では企業側が、本来なら賃上げに充てられる資金が年金拠出に回ると主張してきた。

ホワイトハウス当局者は、トランプ氏が豪州モデルを評価しているのは事実だとしつつ、最終的な制度が豪州方式に沿ったものになるかどうかは、現時点では分からないとした。

トランプ氏自身も最近の発言でその点に触れ、豪州制度を参考にしつつ、「それを基に、もう少し洗練させ、より良い制度にするかもしれない」と述べている。

原題:Trump Embraces Australian Retirement System Backed by Larry Fink(抜粋)

--取材協力:Caitlin Reilly、Suzanne Woolley、Silla Brush、Jennifer A Dlouhy、Chris Bourke.

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