開催都市にのしかかる巨額の負担
もしビザ問題や高額費用によって観客が来ないとなれば、開催都市は深刻な打撃を受けます。ニューヨークで約33億ドル、ダラスで約21億ドルなど、各都市はワールドカップによる莫大な経済効果を見込んでいます。アメリカ・メキシコ・カナダは既存のスタジアムを活用できる利点があるものの、施設の改修や警備、ファンフェス(無料のパブリックビューイング施設)の運営には膨大な費用がかかります。
アメリカ政府は国内11の開催都市に対して、警備対策として約6億2500万ドルの支援に合意しましたが、警備問題に対処するには不十分です。FIFAや都市が算出する経済効果の数字は大抵誇張されており、実際には都市が費用を立て替え、FIFAが試合の収益を独占する構造になっています。過去14大会のデータを振り返っても、ロシアを除いてほぼすべての開催国が赤字に陥っています。純損失が生じた場合、その残りの差額は最終的に納税者が負担することになるのです。

FIFAの莫大な収益と空席リスク
その一方で、非営利団体であるはずのFIFAは今回のワールドカップの4年間で約130億ドルという莫大な収益を見込んでいます。これは2006年ドイツ大会の5倍に跳ね上がった数字です。収益の大部分は推定約39億ドルに上る放送権料によるものですが、独自の転売プラットフォームで売り手と買い手双方から手数料を徴収することでも収益を大きく押し上げます。

世界的な反発を受け、FIFAも一部の熱狂的なファンのために60ドルの安価なチケットを用意しましたが、これは全体の2%未満にすぎません。つまり、実質的にスタジアムで観戦できるのは、ビジネスや大企業といった一部の世界の住人に限られる恐れがあります。
もし大衆がチケットを買えなければ、どうやってサッカーの支持基盤を築くというのでしょうか。高額すぎる価格設定や排他性により、現地のファン層が薄い国同士の試合では「スタジアムが空席だらけになる」というリスクが指摘されています。テレビ放送で空席が映し出されることを絶対に避けたいFIFAが、大会直前になってチケット価格を暴落させる可能性すらあります。

ワールドカップには勝者が生まれ、1チームが栄光のトロフィーを掲げます。しかし、敗者となるのはグラウンドに立つ者たちだけではないのです。ピッチ上の「美しきゲーム」の裏側では、極めて高価でシビアなビジネスゲームが行われているのです。
