アラブ首長国連邦(UAE)とイランの国家安全保障担当の高官が、米国とイスラエルによる対イラン戦争の開始以来初めて対面で会談した。事情に詳しい複数の関係者が明らかにした。

匿名を条件に語った関係者によると、今週の会談は双方にとって大きな方針転換を示すもので、二国間関係の安定化の重要性に対する認識が高まっていることを反映している。

UAE指導部は石油生産能力の拡大や人工知能(AI)向けデータセンターへの数十億ドル規模の大型投資を含む野心的な経済計画を維持したい考えだ。こうした関係はイランにとっても重要で、戦争前にはイランにとってUAEは主要な貿易相手国であり、制裁対象となっているイラン産原油の重要な輸出ルートでもあった。

関係者によると、今回のUAEによるイランとの接触の主な狙いは、敵対視しながらも現体制の存続は避けられないとみているイランとの緊張緩和にあった。

2月下旬に戦争が始まって以降、イランはUAEに対して最も多くの攻撃を行ってきた。これに対し、UAEも複数回にわたり反撃しており、イランに対してはアラブ近隣諸国の中で最も強硬な姿勢を取ってきた。だが現在のUAEは、イランやその代理勢力による攻撃を受けながらも、緊張緩和に向けて外交的な働きかけを進めているカタールやサウジアラビアと同じ道を歩み始めているようだ。

エネルギー施設や軍事基地への攻撃を受けたサウジアラビアは、4月上旬に外相レベルでイランとの接触を再開した。一方、ラスラファンの天然ガス施設に対する大規模な攻撃を受けたカタールは、関係改善に向けた動きに最も積極的だ。5月下旬にはイラン代表団を受け入れ、米国とイランの仲介役としての関与を強めている。

これらアラブ3カ国は、米国とイスラエルによる空爆で大きな被害を受けたとはいえ、ペルシャ湾を挟んで向かい合う人口9000万人の隣国であり、なお相当な軍事力を有するイランと共存する必要性を認識している。

関係者の1人によると、イラン側がUAEとの高官級対話の再開を目指して複数回にわたり働きかけていた。しかし、UAE側は、協議相手が新たな最高指導者モジタバ・ハメネイや強い影響力を持つイスラム革命防衛隊に直接つながる人物であることを確認するため、これまで応じるのを見送っていたという。

戦争では、ハメネイ師の前任者で父親でもあるアリ・ハメネイを含む複数のイラン指導者が死亡した。米国は、現在誰が実権を握っているのか見極めるのは困難だとの認識を示している。

戦争期間中に確認されているUAEとイランの接触は、このほかでは4月中旬の停戦直後に行われたものだけだ。UAEのマンスール副大統領は、イランのガリバフ国会議長と地域の緊張緩和策について協議した。

関係者の1人によると、この電話会談と、UAEアブダビ首長国のハリド皇太子による北京での習近平国家主席との会談を経て、両国間の対話ルートが開かれた。

UAE政府当局者はブルームバーグに対し、政府の規則に従い匿名を条件に、UAEの外交政策は中東全域で緊張緩和を促進し、緊張を低減するとともに、恒久的な平和と安定の実現を目指すことを基本方針としていると説明した。

関係者によると、UAEはこの紛争の影響から地域の人々を守るため、米国を含む各国の取り組みを支持している。

今週の会談は、UAEの姿勢がさらに変化していることを示すものでもある。5月下旬には、UAEのムハンマド大統領がカタール、サウジアラビア両国の首脳とともに、トランプ米大統領に対し、イランに対する全面的な軍事行動の再開を見送り、交渉にさらなる機会を与えるよう求めていた。

米国とイスラエルによる対イラン戦争の開始以降、イランはUAEに対して約3000発のミサイルとドローンによる攻撃を行ってきた。その大半は、米国や英国、フランス、イスラエルなどの支援を受けた高度な防空システムによって迎撃された。それでも少なくとも13人が死亡し、石油・ガス施設や港湾、ホテルなどが数十億ドル規模の被害を受けた。

UAE指導部は、先月にイランの支援を受けるイラク民兵組織がアブダビ西方のバラカ原子力発電所を標的にした攻撃を含むイラン側の攻撃について、テロ行為だと非難していた。

こうした攻撃を受け、UAEは戦争開始当初、強硬姿勢を取るようになった。ブルームバーグ・ニュースが報じたところによると、UAEはイランへの攻撃に加え、サウジアラビアやカタールなど湾岸アラブ諸国に対し、イランを抑止するための共同対応を取るよう働きかけたが、実現には至らなかった。

関係者によると、ホルムズ海峡の閉鎖継続や、4月上旬から続く不安定な停戦、さらに米国とイランの交渉が遅々として進んでいないことを受け、UAEの判断は変化した。現在は経済や安全保障へのさらなる被害や混乱を最小限に抑えることを最優先課題としているという。

こうした取り組みは一定の成果を上げている可能性がある。バラカ原発が標的となって以降、イランはUAEに対する攻撃を行っていない。一方、今週は米国とイランの小規模な軍事衝突が激化する中、イランはクウェート、バーレーン、ヨルダンを攻撃対象としている。

トランプ大統領はイランとの合意に至っていないことへの不満を強めており、11日にはイランに対する攻撃を3夜連続で実施する意向を示した。

UAEはイランとの外交関係を維持している一方、国内にあるイラン関連の社会福祉機関や医療機関、教育機関の一部を閉鎖した。一部のイラン人に対する居住査証(ビザ)を取り消したものの、現在も数十万人規模のイラン人を受け入れている。

UAE大統領の上級顧問を務めるアンワル・ガルガシュ氏は、イランに対する信頼が損なわれたと繰り返し述べている。同氏は関係の本格的な再構築には、無条件でのホルムズ海峡再開と、イランによる賠償金の支払いが前提条件だとの考えを示している。UAEはまた、米国とイランの合意には、イランの核開発能力や弾道ミサイル、さらに地域内の代理勢力への支援の問題を盛り込む必要があると主張している。

一方、トランプ大統領はイランの核開発計画の抑制に意欲を示しているものの、米国は和平合意から民兵組織や弾道ミサイルの問題を除外する方向に傾きつつあるようだ。

原題:UAE and Iran Meet Face-to-Face to Try to Deescalate Tensions(抜粋)

もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp

©2026 Bloomberg L.P.