イーロン・マスク氏率いる米宇宙開発企業スペースXの新規株式公開(IPO)が迫る中、これまで急騰してきたコンピューター向けメモリーやストレージ関連銘柄に対する個人投資家の熱狂は冷めつつある。

バンダ・リサーチがまとめたデータによると、個人投資家は半導体株の保有を減らしているほか、他の銘柄でも押し目買いを手控えている。大幅に上昇してきたAI関連株の利益確定売りに過ぎない可能性もあるが、スペースXの上場に備えて投資資金を確保する動きとみるアナリストもいる。

スペースXほどIPO前から大きな期待を集めている企業は少ない。熱心なマスク氏支持者も多い個人投資家は、同社株への投資機会を狙っている。まだ利益を上げていないロケット企業に投資するため、AI関連の勝ち組銘柄を手放すという賭けが成功するかどうかは不透明だ。ただ、多くのアナリストはこうした資金シフトの動きについて、今後さらなる価格変動を招く要因になるとの見方で一致している。

ウェルズ・ファーゴ・インベストメント・インスティチュートのグローバル株式ストラテジスト、ダグラス・ビース氏は電話取材に対し、「既存のテクノロジー株をはじめとする保有株の売却は、年内を通じて混乱やボラティリティーを引き起こす可能性がある」と指摘した。

スペースXや今後予定される2件の大型IPOに加え、既存テクノロジー企業による巨額の株式売却は、ボラティリティーをさらに高める可能性がある。家計の株式保有比率が過去最高水準付近にある中、市場への影響は一段と大きくなりそうだ。

リテール投資家の資金動向を追跡するバンダのデータによると、個人投資家は10日まで3営業日連続で個別株を売り越した。こうした動きは2020年3月以来初めて。売りは主に半導体メーカーや、最近まで相場をけん引してきたAI関連銘柄に集中している。

バンダ・リサーチのグローバルマクロストラテジスト、ビラジ・パテル氏は「個人投資家は今後予定されているIPOに備えて投資余力を温存している可能性がある」と指摘。「例年であれば、この時期にはもう少し活発な取引が見られるはずだが、何らかの要因が個人投資家の取引を抑制しているようだ」と述べた。

バンダのデータによると、個人投資家は8日に2023年11月以来最大規模の資金を個別株から引き揚げた。翌9日にはテクノロジー株を中心にS&P500種株価指数が下落したが、個人投資家は様子見姿勢を維持した。

最近の勝ち組を売却

BNPパリバの株式・デリバティブ戦略担当の米国責任者、グレッグ・ブートル氏は、個人投資家に人気の高い米マイクロン・テクノロジー株の最近の下落は、リテール投資家がスペースXへの投資資金を捻出するため「最近の勝ち組銘柄やレバレッジ型商品を売却している」ことの表れかもしれないと指摘した。

もっとも、市場におけるAIブームへの疲労感や、AIが期待されるほど経済に大きな変革をもたらさないのではないかとの懸念など、他の要因が影響している可能性もある。

一方、宇宙関連銘柄はリスク回避の流れに逆行している数少ない分野の1つだ。バンダのデータによると、同分野に対する個人投資家の投資意欲は2024年以来の高水準となっている。

過去最大規模となるスペースXのIPOを控え、投資家が株式エクスポージャーを縮小しているとみているのはパテル氏だけではない。アンソロピックやサム・アルトマン氏率いるOpenAIなど今年の次の大型案件を前に、さらなる売りが出る可能性も指摘されている。

DAデービッドソンのテクノロジー調査責任者、ギル・ルリア氏はブルームバーグテレビジョンのインタビューで「投資家はこれらのIPOへの投資資金を確保するため、保有する上場企業株から資金を引き揚げる必要がある。特にテクノロジー株や大型銘柄が対象になるだろう」と話した。

「消化不良」

ウェルズ・ファーゴのビース氏は、個人投資家によるIPO前の売りが米国株の持続的な下落や短期的な相場の天井を示す可能性は低いとみている。ただ、リテール投資家は短期的な値動きを追ういわゆる「ファストマネー」の相当部分を占めており、短期的には市場に大きな影響を及ぼし得ると分析した。

同氏によると、米国の家計金融資産に占める株式の割合は約35%と過去最高に達している。個人投資家が「新たな投資先への資金を捻出するため、既存の保有株を売却する可能性がある」という。

その結果、市場は「消化不良を起こす」かもしれないと同氏は付け加えた。

原題:Retail Traders Dump Big Tech to Raise ‘Dry Powder’ to Buy SpaceX(抜粋)

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