リスクをどう引き受け、どう付き合うか
個人投資家にとって資産形成は、単に高いリターンを求める行為ではない。将来の生活に必要な購買力を守るために、預貯金と投資のバランスを取ったうえで、どのように投資を続けるかを考える行為である。本稿で見てきたように、インフレリスク・価格変動リスク・行動リスクの三つは互いに関連しあい、全てを避けることはできない。重要なのは自分の目的、運用期間、家計状況に照らして、どのリスクをどの程度引き受けるかを判断することである。
この判断を個人の意志や知識だけに委ねるべきではない。人間には損失を大きく感じやすい心理特性があり、損益を頻繁に確認できる環境で資産運用を続けるのは誰にとっても容易ではない。だからこそ、個人の努力を支える制度やアドバイザーが重要になる。
少額投資非課税制度(NISA)は、保有する資産をいつでも売却できる柔軟さがある一方で、短期的な値動きに反応して売却してしまう誘惑も生じやすい。個人型を含む確定拠出年金(DC)は原則60歳まで引き出せない代わりに長期の資産形成を支える性格を持つ。どちらが優れているかということではなく、それぞれの特性を踏まえた使い分けが長期の資産形成の成功につながる。三つのリスクをどう引き受け、どう付き合うか。個人が制度をうまく使いこなし、無理なく続けられる環境整備こそ、これからの資産形成を支える基盤となる。
(※情報提供、記事執筆:第一ライフ資産運用経済研究所 政策調査部 主席研究員 奥田 宏二)