世界的に財政健全化に向けた動きは鈍い。コロナ禍後に一時改善した財政赤字や政府債務残高も、コロナ禍前の水準に戻っていない国が多い。危機対応や高金利による利払い負担、防衛費の拡大は多くの国で共通する財政拡張圧力であり、各国特有の制約が財政健全化を妨げている面もある。拡張的な財政運営は短期的に景気を下支えする効果がある一方、金利上昇や高インフレ、金融システムリスクといった副作用も伴う。本稿では、主要国の財政状況を概観し、拡張的な財政運営がもたらすリスクについて考察する。
コロナ禍後も緩和的な先進国の財政運営
まず主要国のコロナ前後での財政状況を概観し、その上で拡張的な財政運営が経済に及ぼす影響について考察していく。

図表1(画像1枚目)は、主要国の財政赤字と政府債務残高(いずれも対GDP比、以下同)をコロナ禍前の2019年、コロナ禍中の20年、直近の25年で比較した実績データである。財政赤字は、コロナ禍前からコロナ禍中にかけて大幅に拡大した後、直近では改善している。しかし、直近の財政赤字幅をコロナ禍前の水準を下回るまで改善させている国は、図表に示した主要国では日本とスペインのみである。
政府債務残高もおおむね同じ状況である。コロナ禍前からコロナ禍にかけて大幅に悪化した後、直近では改善している国が多いが、コロナ禍前と比較すると、主要国すべてで悪化している。
25年の世界経済は、米ドナルド・トランプ大統領の関税政策に翻弄された面はあるが、世界成長率は3.4%と堅調に推移した。これはコロナ禍前の成長率(19年の3.0%)よりも高く、財政健全化を目指せる環境であったが、主要国の財政運営は緩和的だったことになる。