転職は「離職」ではなく、キャリア再構築の手段

本稿で見てきたように、近年の転職市場では、人手不足を背景として人材流動化が一段と進み、転職はもはや若年層だけのものではなくなっている。かつては「転職は35歳まで」といった見方が一般的だったが、現在では企業側の採用姿勢そのものが変化している。少子化によって新卒採用だけでは必要人員を確保しにくくなったことに加え、DX化や事業転換の進展によって、企業は年齢よりも経験や専門性を重視する傾向を強めている。

その結果、転職市場では中高年層の存在感が高まっている。特に40代後半までの男性では、転職後に賃金が上昇した人の割合が4割を超えており、従来に比べてミドル世代の転職条件は大きく改善している。また、女性についても、40代後半まで賃金上昇割合が4割を超えるなど、転職市場における評価が高まっていることが分かった。これは単なる人手不足だけでは説明できず、この20年ほどで女性の職域が拡大してきたことが大きく影響していると考えられる。従来、女性の雇用は補助業務に偏りがちだったが、近年、企業の雇用管理の見直しや女性活用方針によって、総合職や専門職、管理職への進出が進んだことが挙げられる。専門性の高い職務経験を持つ女性が増えたことで、転職市場でもスキルやマネジメント経験が評価されやすくなっていると考えられる。

長寿化によって就業期間が延びる中、転職は単なる「離職」ではなく、働く人が人生後半も含めて能力を発揮するためのキャリア再構築の手段になりつつある。企業にとっても、多様な経験を持つ人材を受け入れることは、組織の活性化やイノベーション創出につながる可能性がある。今後の日本社会では、年齢や性別によってキャリアの選択肢が制限されるのではなく、経験や専門性を生かしながら働き続けられる労働市場を形成できるかが、大きな課題になるだろう。

(※情報提供、記事執筆:ニッセイ基礎研究所 生活研究部 准主任研究員・ジェロントロジー推進室兼任 坊 美生子)