人手不足の深刻化などによって、転職市場が活発化している。少子化による新卒採用のひっ迫を背景に、企業は中途採用への依存度を高めており、中高年層の転職も増えている。本稿では政府統計を基に、男女の違いや中高年の動きに注目して、転職市場の最新動向について分析する。
さらに近年は、人手不足に加えて産業構造の変化の影響がある。経営環境の変化に応じて、即戦力人材や専門性の高い人材への需要が高まっており、企業は従来よりも中途採用を積極化している。一方、働く側でも、終身雇用よりも、自分に合った働き方や成長機会、キャリア形成を重視した自発的な転職希望が増えている。こうした変化によって、転職は男性若年層だけのものではなく、女性やミドル世代にも広がりを見せている。
近年の転職市場の概況
1)転職者数の推移
総務省の「労働力調査」より、正規雇用と非正規雇用を含む年間転職者数について、2002年以降の中期的推移をみてみる。男女を合わせた総数は、2000年代半ばにいったん上昇し、リーマンショックが起きた2008年頃から減少傾向が続いた後、2010年代後半から上昇に転じた。2019年には350万人を超えてピークを迎えたが、コロナ禍に入って再び減少し、2022年から上昇している。直近の2025年は計330万人で、前年とほぼ横ばいだった。中期的に見ると、転職市場は景気動向に伴って上下しているが、近年の増加は、人手不足によって押し上げられていると考えられる。

企業の人手不足の状況について、厚生労働省の「労働経済動向調査」から、労働者が「不足」と回答した企業割合から「過剰」と回答した企業割合を差し引いた「労働者過不足判断D.I.」を見ると、2002年以降、悪化傾向にあり、特に2010年代後半以降はコロナ禍を除いて顕著である。
転職者数の推移を男女別にみると、傾向は男女とも類似しているが、女性の方が男性を上回っている。既出レポートでも述べたように、男性は家庭要因による離職経験が少ないため、正社員・正規職員としての長期雇用が多いのに対して、女性の場合は、結婚・出産等を機とした離職が多く、その後は、パートなどの非正規雇用で働く人が多い。いったん非正規雇用に就くと、勤続年数が延びても昇給幅が小さいため、さらに転職のハードルが低くなると考えられる。

2)産業別転職者数
それでは、転職者が多いのはどの産業だろうか。厚生労働省の「雇用動向調査」より、産業別の転職者数をみると、男女を合わせた転職者数が多いのは、「医療・福祉」、「卸売業・小売業」、「宿泊業・飲食サービス業」など、慢性的な人手不足が続く対人サービス分野である。これらの産業では、少子高齢化やインバウンド増加などによる需要拡大によって、労働需要が高まっているが、離職率が高く、中途採用への依存度が高いと考えられる。
一方、「情報通信業」や「学術研究、専門・技術サービス業」でも一定数の転職者が存在している。DX化やデジタル投資の拡大を背景に、IT人材や専門職人材への需要が高まっていることが影響しているとみられる。従来の日本型雇用では、専門性の高い人材は企業内部で育成される傾向が強かったが、近年は外部労働市場を通じた人材獲得が一般化しつつある。このように産業別にみると、転職市場の活発化は、人手不足や産業構造の変化を背景として進んでいることが分かる。

3)職業別転職者数
続いて、転職者数を職業別にみてみる。男女を合わせた転職者数が多いのは、「サービス職業従事者」、「専門的・技術的職業従事者」、「事務従事者」などである。サービス職では、外食、宿泊、小売、介護など、人手不足が深刻な分野を中心に労働移動が活発化していると考えられる。また、専門的・技術的職業では、医療専門職やIT関連職種など、資格や専門スキルを持つ人材への需要が高まっている。労働者側から見ても、専門性があれば、企業横断的に能力を生かしやすいため、相対的に転職市場との親和性が高いと言える。
さらに、事務職でも一定規模の転職がみられる。近年はデジタル化や業務効率化、AI活用の進展によって、事務職の中でもこれらのスキルを持つ人材ニーズが高まっており、より条件の良い職場や柔軟な働き方を求めた転職が増えている可能性がある。このように職業別にみると、近年の転職市場は、専門性や対人サービス能力を持つ人材を中心に流動化が進んでいると言える。
