働く人の転職希望の高まり
次に、労働力調査に戻って、転職希望者数の過去10年間の推移を性別にみてみる。男女ともコロナ禍以降、増加ペースが上がっている。コロナ禍の影響で、勤め先の経営環境や事業内容が変化したことや、在宅勤務がしやすい企業と、そうではない企業に二極化していることが、転職希望者数を押し上げている可能性がある。それに加えて、特に若年層では、「一つの会社に長く勤めること」よりも、「自分に合った働き方やキャリア形成」を重視する傾向が強まっていると指摘されており、転職に対する心理的ハードルが下がっていると考えられる。

近年の転職市場の質的変化
1)転職者数に占める中高年層の増加
それでは、転職者のうち、中高年層はどれぐらいいるのだろうか。同じく労働力調査より、転職者数の性別・年代層別の構成割合の推移をみてみる。仮に、15歳から44歳を「若年層」、45歳以上を「中高年層」とすると、従来は、男女ともに若年層が大部分を占めていたが、近年、その差が縮小している。男性では、若年層と中高年層の比は、2013年には男性は7対3、女性は8対2だったが、直近の2025年には男女いずれも6対4となった。
もう一つ、中高年層の割合が増えている理由として考えられるのが、企業が中高年を対象とした早期希望退職の募集を増やしていることである。東京商工リサーチの上場企業を対象とした調査によると、2025年度、「早期・希望退職募集」が判明した企業は46社(前年度51社)で、前年度を下回ったが、募集人数は2万781人で、前年度(8,326人)から急増した。従来の業績悪化による人員削減とは異なり、好業績の企業でも、将来の事業転換や人員構成を見直すため、中高年を対象とした募集が加速しているという。

2)転職後に賃金アップする割合がミドルでも増加
次に、転職によって賃金が上がる人がどれぐらいいるのか、厚生労働省の「雇用動向調査」のデータを用いて、年齢階級別にまとめた。転職者(1年以内に離職経験あり)のうち、パートなどの短時間労働者を除く「一般労働者」について、前職よりも賃金が「増加した」と回答した人(以下、「増加層」)の割合を男女別、年齢階級別にみると、最新の2024年は、男性の場合、20代以降は概ね若いほど増加層が多く、「若いほど転職が有利」と言える。20代前半では6割弱、20代後半から30代後半までは約5割を占める。40代前半では4割近くに下がるが、40代後半で再び約5割となるが、50代前半では約3割、50代後半では2割と低下していた。
女性の場合は、20代から50代前半まで、増加層は4割から5割弱で顕著な差はなかった。50代後半以降は低下していた。

過去の状況と比べると、こうした特徴がより鮮明になる。例えば2012年調査を見ると、男性でも転職による賃金の増加層が4割を超えていたのは30代前半までである。30代後半では3割強に低下し、40歳以降は3割を下回っていた。かつて「35歳限界説」という言葉があったように、企業が新卒採用によって人員計画を概ね充足できており、中途採用は若年層中心だったと考えられる。しかし2024年は、少子化による人手不足が進み、前述した通り、男性では40代後半まで4割を超えた。賃金変動からみると、かつて「35歳」にあったラインは「50歳」に引きあがったと言えるだろう。
女性の場合は、2012年当時は、転職による賃金増加層の割合は、すべての年代で4割を下回っていた。40代後半以降では2割前後まで低下し、「ミドル女性の転職」は従来、ハイスキルを持つ一部に限られていたと言える。しかし2024年には、40代後半まで増加層が4割を超えた。2024年と2012年の増加層の値を比べると、40代後半女性の上昇率は、すべてのカテゴリーの中で最大である。この間、人手不足だけではなく、企業の雇用管理の見直しや女性の進学率上昇等によって、女性の職域が拡大し、総合職や専門職、管理職など、高度な職務を行う人が増えたことが背景にあるだろう。
