マーケティング代理店を経営するケイトリン・ワターソン氏は、自身のキャリアは夏季インターンシップのおかげだと話す。アメリカン大学の学生だった同氏は、ニューヨークの高級美容ブランドでひと夏を過ごし、実務経験を積んだ。

約20年たった今でも、プラザホテルでの飲みの席で、上司から卒業後のフルタイム採用を持ちかけられたことを鮮明に覚えているという。その後、マーケティング分野でキャリアを築き、2020年末に自身の代理店「フィフティー・シックス」を設立。多い時には8人のインターンを受け入れていた。

ワターソン氏はインターンの指導を楽しみ、次世代にチャンスを提供している実感を得ていた。しかし、1人で会社を経営する中で、中途半端な仕事の後始末に追われたり、顧客とのビデオ会議を車の中から行うのは不適切だと教えたりするための時間的負担が次第に大きくなっていった。その一方で、人工知能(AI)はこれまでインターンに任せていた業務をより速く、より多くこなせるようになっている。

春学期には、ワターソン氏の下で働くインターンの数は6人から3人に減った。この夏はインターンを受け入れない予定だという。同氏は「心苦しくはあるが、コストは上昇する一方で、安くなるものは何もない。事業を守るためには、正しい判断をしなければならない」と述べた。

イラスト:Aaron Fernandez/ブルームバーグ・ビジネスウィーク

インターンシップは長年にわたり、大学生が仕事の仕組みを学び、企業が比較的負担の少ない形で将来の新卒採用候補を育成するための通過儀礼とされてきた。しかし、こうした役割は今やAI時代の新たな犠牲者になりつつある。

大学生の採用動向に関するドレクセル大学の年次調査によると、企業のおよそ20%が、今年はインターンの採用数を減らすか、インターンシップ自体を取りやめる予定だと回答した。この割合は、2022年に対話型AI「ChatGPT」が登場して以降、増加している。

一方で、インターンシップ制度を拡大する企業の割合は減少傾向が続いている。制度拡大を予定していると答えた企業は3割強で、前年からは増えたものの、生成AI登場前と比べると大きく落ち込んでいる。こうした数字は、インターンシップそのものが消滅しつつあるわけではないものの、規模を縮小する企業が増える一方で、インターン受け入れを積極的に拡大する企業が減少していることを示している。

一部の企業では、アンソロピックの「Claude(クロード)」のようなAIツールがインターンの役割を果たしている。将来、初級職がなくなることを見越し、インターン採用を減らしている企業もある。いずれにしても、残されたインターンシップの競争はますます激しくなっている。インターン採用プラットフォームのハンドシェイクによると、1ポジション当たりの応募件数の中央値は2022年以降で3倍に増えた。さらに学生の応募時期も早まっており、大学3年生の4分の1は9月末までに翌年夏のインターンシップへ応募している。

数で勝負

多くの大学生にとって、インターン探しは数で勝負する様相を強めている。それは人脈や実績に恵まれた学生でも例外ではない。

ジョージタウン大学に通うバユン・クリシュナ氏は昨年12月以降、約70件のインターンシップに応募した。5月上旬までに得られた面接は1件だけで、それも採用には結び付かなかった。クリシュナ氏は高校時代にカリフォルニア大学アーバイン校や米下院議員の事務所でインターンを経験しており、かつて全米英単語つづり大会のファイナリストにもなった経歴を持つ。にもかかわらず、こうした結果に終わったという。

ジョージタウン大学の2年生になるクリシュナ氏は現在、インターンシップの選考で、正社員としての就職先がなかなか見つからない既卒者と競い合うことも少なくない。「1年生にとって、インターンシップ市場はずっと複雑になっている」と語る。その後、5月下旬にクリシュナ氏は2件のインターンシップを獲得した。ただし、いずれもカリフォルニア州の劣勢な候補の陣営で、6月2日の予備選で敗れれば活動そのものが終了する可能性が高いという条件付きだった。

南カリフォルニアのクレアモント・マッケナ大学に通う2年生のサミタ・パルプディ氏も、秋からインターン探しを始めた。同氏は複数のプログラミング言語を使いこなし、高校時代には4件のインターンシップを経験したほか、生徒会長や模擬国連副会長を務めながらスタートアップ企業を共同創業した経歴を持つ。さらに父親はグーグルの採用担当マネジャーだ。

それでも、ベンチャーキャピタルやシンクタンク、スタートアップ企業、メディア企業など57件に応募した結果、パルプディ氏が得た唯一のオファーは、インドネシアでの無給インターンだった。

パルプディ氏はその職を受け入れた。バリ島で夏を過ごすこと自体は悪い話ではないが、同氏は採用プロセスから人間味が失われている原因として、AIによる選考ツールの広範な利用を指摘。「企業が求めるキーワードが応募書類に入っていなければ、応募内容や経験の質は評価されない」と語る。

学生側も活用

AIがインターンシップの機会を減らし、採用過程に新たな障壁を生み出す一方で、学生もその壁を突破しようとAIを活用している。

パルプディ氏は「VMock」というツールを使い、履歴書やカバーレターについてAIによる助言を受けている。クリシュナ氏は、応募先ごとにカバーレターのひな型を調整するためにAIを利用している。70通もの応募書類を作成するのに、ほかにどんな方法があるだろうか、というわけだ。

企業の多くが面接プロセスにAIを導入していることから、ニュージャージー州ホーボーケンにあるスティーブンス工科大学の大学院生、ベザリール・ボトゥマンチ氏は、各社の選考システムが応募者をどのように評価しているのかを知るため、ソーシャルニュースサイトのレディットで情報収集している。

同氏によると、一部のAI面接官は、視線をそらしたり、「えー」「あの」といったつなぎ言葉を多用したりすると減点するという。そこでボトゥマンチ氏は、「Big Interview」という別のAIツールを使い、模擬面接を録画して受け答えを磨いている。この取り組みによって、話が脱線するといった失敗は避けられるようになったと同氏は話す。ただ、それでもインターンシップ獲得には結び付いていない。

応募するだけ

もっとも、学生たちがAIツールを使って別のAIツールによる選考を攻略しようとしていることについて、キャリア支援担当者らはその過程で失われるものがあるのではないかと懸念している。

スティーブンス工科大学のキャリアセンターでシニアディレクターを務めるレベッカ・アンダーセン・ポリメダ氏によると、リンクトインなどのプラットフォームにあるワンクリック応募機能を使って何十件ものインターンシップに応募しながら、その仕事をなぜ希望するのかを説明するカバーレターを一度も提出したことがない学生と話す機会が少なくないという。

もちろん、AIを活用した大量応募があふれる現在の雇用市場全体にとって、これは問題だ。しかし同氏はこの傾向について、それ以外のやり方を知らない現在の大学生にとって特に深刻な問題だと指摘する。彼らは高校時代にZoomで授業を受け、ChatGPTを使ってリポートを書いてきた。そしてAIツールは、就職活動も同じように簡単にできるかのような誤った期待を与えているという。

その結果、学生たちはAIツールを使って60件もの求人に応募し、どこからも返事が来ないと、より強い拒絶感を味わうことになる。「自分が何を望んでいるのか分からなくなっている」と同氏は語る。

コロンビア大学やニューヨーク大学を含む教育機関で10年以上にわたりキャリア支援に携わってきたアンダーセン・ポリメダ氏は、履歴書の書き方ではなく、基本的なコミュニケーションの作法を学生に教えるために費やす時間が、かつてなく増えていると話す。

AIを使いこなせる若手

この状況を逆手にとり、AIへの習熟度を評価しながら若い人材の採用を増やしている企業もある。グーグルで採用担当バイスプレジデントを務めるブライアン・オング氏によると、同社の著名なインターンシップ制度は今年、前年から規模を拡大している。

オング氏はその理由について「AI研究への継続的な投資が一因だ。これが新たなインターンシップの機会を生み出している」と説明した。

ドレクセル大学の副学部長で、大学採用動向に関する年次調査の共同執筆者でもあるムルガン・アナンダラジャン氏は、企業がAIスキルを持つインターンを積極的に求めるのは珍しいことではないと指摘する。「多くの組織がAIへの対応に苦慮している。インターンが何を教えてくれるのか、どのような知見を示してくれるのかを知りたいと考えている」と語った。

こうした変化の中で、大量応募とは異なる独自のアプローチを選ぶ学生もいる。メーン州のボウディン大学に通う2年生のモハマド・ヒジャジ氏はこの夏、有名企業の既存インターンシップ制度には意図的に応募しなかった。

「マンツーマンで指導を受けられる環境が欲しかった」と話すヒジャジ氏はマイクロソフトの「Copilot」を使い、自身の関心分野である労働法関連を含む小規模企業を調査。その後、簡潔なメールやリンクトインのメッセージを経営幹部に送り、インターン候補として売り込んだ。

結果として、ヒジャジ氏はインターンシップを1件ではなく、2件獲得した。

(原文は「ブルームバーグ・ビジネスウィーク」誌に掲載)

原題:AI Is Making the Summer Internship Experience Even Worse(抜粋)

もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp

©2026 Bloomberg L.P.