ベッセント氏は堅調なファンダメンタルズが為替レートに反映と発言
ベッセント米財務長官は5月12日の片山財務相との会談後、為替市場について「望ましくない過度な変動への対応について、私たちのチーム間の意思疎通と連携は引き続き緊密かつ強固だ」(日経新聞)とのコメントをX(旧ツイッター)に投稿した。片山氏も記者会見で、為替を含めた金融市場の動向について全面的に理解を得たと述べており、少なくとも表向きにはベッセント会談が無風に終わった格好である。むろん、「日銀の金融政策が話題になったことが12日、明らかになった」(毎日新聞)と報じられており、後から水面下で行われた議論が明らかになってくる可能性には留意が必要である。ロイターによると、ベッセント氏は高市首相との会談後、植田日銀総裁が日銀を「大成功」を収める金融政策へと導くことについて、強い確信を持っていると述べたと報じた。また、「日本経済のファンダメンタルズは堅調で回復力があり、それが為替レートに反映されるだろうと信じている」(同)とも述べたという。
日銀は25年12月に利上げを実施した。その後は利上げを実施していないが、イラン情勢の悪化などの状況に鑑みれば、様子見姿勢を続けていることは仕方ない面がある。少なくとも、ベッセント氏が表立って日銀の利上げを要求する必要はない状況と言える。では、本音はどうなのか?という点が重要だが、植田総裁が「大成功」を収めるという発言については、やや利上げを要求しているような発言に思われる。しかし、ファンダメンタルズが堅調であれば、それが為替レートに反映されるという点については、足元の為替や物価への対応よりも経済の下振れリスクに対応することの正当性を認めているように思われる。片山氏や高市首相は、交易条件の悪化によって日本経済には下振れリスクが大きいため、利上げはできるだけ回避したい、と説明した上で、その間に円安圧力が高まれば為替介入で時間を稼ぐという姿勢を説明したのだろうと、筆者はみている。交易条件の悪化をもたらしている原油高(イラン情勢の悪化)については、トランプ政権が引き起こしたことであり、トランプ政権としても中間選挙までにはこの問題を改善させる算段だろう。ベッセント氏からすれば、高市政権が為替介入で時間を稼ぐという方針を否定する理由はないはずである。日銀が早期に利上げをすることを裏で約束したようなことはないだろうと、筆者はみている。
(※情報提供、記事執筆:大和証券 チーフエコノミスト 末廣徹)