株式市場は米金利の上昇を嫌気
5月12日の米国株式市場は、イラン情勢の不透明感に加えてインフレ懸念が強まり、軟調な展開だった。ダウ平均は小幅ながらも3日続伸となったが、ナスダック指数やSOX指数は下落した。ダウ平均が前日から上昇した背景は、ディフェンシブ株への選好が強まったことがある模様であり、弱気な見方が増加したようである。むろん、現時点ではハイテク関連株や半導体関連株に高値警戒感が生じたという一時的な要因が大きいと思われる。しかし、米金利に上昇圧力がかかる中で、市場が次の展開を意識し始めた可能性がある。なお、イラン情勢の不透明感が続いているが、これは今に始まった話ではない。今後は金利の動向が重要だと、筆者はみている。
インフレ予想の上昇が金利上昇に寄与する中、FRBの判断に注目が集まる
5月12日の米国債券市場は、英金利が上昇する中で地合いが悪い展開が続く中、4月のCPIが市場予想を上回る結果となり、金利が上昇した。長期金利は前日差+5.0bp、2年金利は同+3.8bpだった。この日も10年実質金利(同+3.8bp)と10年インフレ予想(BEI)(同+1.1bp)の双方が上昇した。原油高によるインフレ懸念に加えて、4月以降の株高によるリスクオン相場が金利上昇圧力につながっている。前述したように、株式市場が金利上昇を嫌気して調整した模様であることから、金利についても上昇余地は小さくなっていく可能性が高いが、BEIの上昇はFRBをタカ派化させる要因になるため、①リスクオン⇒②BEI上昇⇒③FRBのタカ派化、という順番があるとすれば、FRBのコミュニケーションの変化には注意が必要である
CPIよりもBEIの上振れが債券市場にとってのリスク
4月の米CPIはヘッドラインが前年同月比+3.8%、コアが同+2.8%となり、市場予想を小幅に上回った。航空運賃などエネルギー関連の項目が押し上げられただけでなく、住居費(前月比+0.6%)がまとまった幅で上昇したことが注目された。もっとも、住居費は25年10月について、政府閉鎖にともなって家賃データ(過去6か月分のデータを参照する)が取得できずに弱めのデータが入っていた影響が剥落した影響が大きい。むろん、エネルギー価格の上昇や各種原材料価格の上昇が全体に波及する効果を見極める必要があるものの、今回の結果はFRBの見方を大きく変えることにはならないだろう。
そもそも、インフレ率の実績データはFRBの利下げのタイミングに影響を与えるものであり、利上げの判断に影響を与えるものとはなりにくい。FRBはコストプッシュ型のインフレは一時的要因と判断する方向で議論しており、上振れたとしてもそれは一時的要因であるとされ、鈍化を待つだけだろう。他方、利上げのタイミングを議論することがあるとすれば、「長期のインフレ予想は安定している」という評価が変わるときである。したがって、市場が警戒すべきなのは、10年BEIが上昇していることの方である。むろん、実績値として強めのインフレ率が続けばBEIが押し上げられる面もある。しかし、4月以降にBEIがレンジを超えて上昇してきた動きは、おそらく株高を起点とした市場全体のリスクオンに連動しているように見える。やはり、株式市場の動きと、それが実体経済に与える影響(株高が個人消費や設備投資を刺激するかなど)を見極めることが重要だろう。