従業員ウェルビーイングに向けてサステナビリティの社内浸透を見直す意義

従業員ウェルビーイングとサステナビリティの両立に向けたハードル

環境に配慮した素材の採用や、再生可能エネルギーの活用、または地域・社会課題の解決に資するプロジェクトへの参画機会の提供など、若年層の社会貢献意識に応える取り組みが社内で広がり、それが従業員ウェルビーイングの向上や定着率の改善につながるという好循環が生まれれば、それは従業員にとっても、またサステナビリティ経営の観点からも望ましい姿である。

しかし、現時点では、従業員ウェルビーイングとサステナビリティ実践の間に、関連する研究において直接的な因果関係が十分に示されているわけではない。

むしろ、従業員ウェルビーイングとサステナビリティ活動は、経営的な配慮が十分に無ければ両立することは難しい、とも考えられている。

たとえば、従業員の社会貢献活動は、主たる業務外の時間的な負担、感情的な負担にもつながりうる。

ある研究でも、サステナビリティ(環境分野)に関する経営目標に向けた従業員の実践と、本業における生産性の目標(売上・利益を生み出す効率)が、ときに緊張関係に立つこと(従業員がサステナビリティ目標と、本業における目標との間の優先順位付けに迷うこと、など)が示されている。

仮に、従業員ウェルビーイングを「(従業員にとって)仕事上の負担やストレス、拘束時間が少ないこと」などと狭く捉えてしまうと、実際の現場が「複数の目標」の板挟みに陥ってしまい、結果として、従業員がサステナビリティに関わる「負担」を避けようとして活動から距離を置くことも考えられるだろう。

従業員にとって「仕事の意味につながる実践」として受け止められるには

しかしその一方で、従業員ウェルビーイングとサステナビリティ実践の間に重なっている両者の「成立条件」に注目すると、それらの好循環に向けた接点は見えやすくなる。

たとえば、ある研究では、両者の促進と実践を支えやすい職場の条件として、
「支援感(会社が自分たちを支えている感覚)」
「意味感(この仕事には意味があるという感覚)」
「参加感(自分も関われる感覚)」
「上司の一貫性」
「心理的安全性(意見や工夫を出しやすい空気)」などが先行研究では挙げられており、

こうした条件が従業員の就労環境として整っている時、サステナビリティ活動は「会社から一方的に課された仕事」ではなく、「従業員の働く意味つながる実践」として受け止められやすくなるとされる。

そして、その実践が仕事の社会的意味を感じさせるものであれば、若年層にとっての「ここ(この会社)で働き続ける理由」を補強する一因になりうるだろう。

言い換えれば、従業員のサステナビリティ活動が直接的に離職を防ぐというのではなく、むしろ、従業員ウェルビーイングとサステナビリティ活動の好循環を回せる職場は、若年層が定着しやすい条件も備えやすい、とも言えるだろう。

この観点からすれば、若年層の定着に向けた「働く意味と納得感を伴う職場づくり」という観点で、サステナビリティの社内浸透を実践していく意義は決して小さくないと思われる。