若年層にとって、給与や労働時間に加えて「仕事の社会的意味」は小さくない
それでは若年層の定着を考える上で、「働く意味があるか」という視点をどのように捉えるべきだろうか。
近年の若年層定着に関する研究でも、若年層の定着は就業条件や処遇だけでなく、納得感や意味づけといった側面から考える必要がある、とする指摘がみられている。
また、若手定着については、単に待遇や負担軽減だけでなく、「辞めない理由」をどうつくるかが重要だという議論もある。
近年注目される「Quiet Committing(仕事や会社に対して、過度に没入するのではなく、納得できる範囲で着実に関わる姿勢)」という見方でも、若手は仕事への過度なコミットメントよりも、自分自身が「納得できる」形で仕事に関わることを重視する傾向が示されている。
その点で示唆に富むのが、次の「仕事を通じた社会貢献意識に関する調査」データである。ニッセイ基礎研究所の調査によれば、「仕事で社会貢献を実感したい」という意識は、20代で相対的に高めにみられている。30代から50代前半でいったん低下し、60代で再び上昇する流れとなっている。
このデータから、少なくとも若年層からは、「仕事を通じた社会貢献」が社会的意味の一つとして見られがちな傾向にあり、彼らにとっての「働くことの意味」を考える上で、無視しにくい要因であることが伺える。

サステナビリティの社内浸透は「施策」だけでなく「受け止められ方」で考えたい
それでは、「仕事で社会貢献を実感したい」と考える若年層を、企業はどう受け止めればよいのだろうか。
企業の現場において、社会貢献とのつながりは、しばしば「企業によるサステナビリティ施策への従業員の関与」や「社内浸透」という課題として論じられることが多い。
ここでいう社内浸透とは、経営者がパーパスやミッションを掲げることだけでなく、従業員がその考え方を、日々の仕事の中で自分ごととして理解し、納得し、日常的な業務行動に移せる状態に至ることを指している。
しかし難しいのは、若年層の定着や従業員ウェルビーイングの向上策として社会貢献活動を考えるとき、企業側の施策に対して従業員の受け止め方が一様ではないという点であろう。
これはサステナビリティ関連の社内施策に限った話ではないが、HR(人事)関連施策の実効性を考えるうえでも、従業員がその施策をどのように受け止めるかは重要な論点とされている。

この観点で言えば、HR施策やサステナビリティ施策が、企業にとって「外向けの看板」や押しつけではなく、仕事の意味、誇り、参加感、成長感と結びつくなら、若手にとっても「この会社で働く理由」の一部になりうる。
逆に、見せかけや矛盾が感じられる場合には、若手ほど距離を取りやすい可能性があるとも言える。
また、ある環境行動に関する研究でも従業員の行動は個人の価値観だけでなく、会社が何を重視しているように見えるか、また組織からどのような支援があると感じられるかによっても左右されることが示されている。
同様に、サステナビリティの社内浸透に向けた施策も、従業員にどう伝わるか、どう経験されるかという観点から考える必要があるとも言えるだろう。