(ブルームバーグ):スペースXの企業価値を巡る議論が数カ月にわたり続いてきたウォール街では、同社の上場を支える金融機関がもう一つの課題に取り組んでいる。過去最大規模になり得る新規株式公開(IPO)を支えるために必要なシステム基盤の整備だ。
IPOの際に投資家需要の集計や配分を支援するS&Pグローバルのエクイティ・ブックビルド部門は、12日に予定されているスペースX株の取引開始を前に、システム基盤の処理効率と容量を向上させる作業を6週間にわたり進めてきた。証券決済機関のデポジトリー・トラスト・アンド・クリアリング(DTCC)では、担当者が週末もシステムを監視し、業界関係者との連絡を続ける予定という。
大型IPOは、単に投資家需要を試すだけの場ではない。毎秒のように発生する膨大な注文やメッセージ、取引を処理する技術基盤や通信ネットワーク、リスク管理システムの能力も試される。証券会社、取引所、マーケットメーカー、清算機関では、注文の取り次ぎから売買執行、決済に至るまで、すべてが同期して機能しなければならない。
スペースXのIPOは、こうしたシステムへの負荷をさらに高めるとみられる。同社には機関投資家、個人投資家、上場投資信託(ETF)から大きな関心が集まっている。事情に詳しい関係者によると、すでに募集株数を上回る注文が集まっており、取引開始後の売買高は新規上場企業として過去最大級になるとの見方が広がっている。

S&Pグローバルのエクイティ・ブックビルド部門は、人工知能(AI)ツールを活用し、実際の取引開始前に潜在的な弱点を洗い出す「プレモーテム」と呼ばれる作業を行った。経営陣によると、この作業でシステム上のボトルネックや処理能力の制約を特定した結果、注文処理能力は3倍に向上し、応答速度は4倍改善したという。
傘下のS&Pグローバル・マーケット・インテリジェンスのエンタープライズ・ソリューション部門責任者、ダレン・トーマス氏は、「最大の懸念はシステムの処理遅延によって注文が記録されなくなることだ」と述べた。
過去のトラブルの記憶はいまも市場参加者の間に残っている。2012年のフェイスブック(現・メタ・プラットフォームズ)のIPOでは、技術的な障害によって注文が執行されたかどうか分からない状態となり、混乱が生じた。最近の取引所システムの障害や市場の急変動では、テクノロジーへの依存度が高まる市場で、問題が急速に波及しやすいことが明らかになっている。
フェイスブックやスペースXなど、数千社の上場先となってきたナスダックはコメントを控えた。

中小にリスク
市場インフラ運営者が注意を払うべき対象は、大手取引所や清算機関だけではない。DTCCのフランク・ラサラ社長兼最高経営責任者(CEO)によると、準備が同業他社より不十分な中小の証券会社やマーケットメーカー、サービスプロバイダーが、一瞬で混乱の発生源となる可能性があるという。
金融システムの中核に位置する清算機関として、DTCCは自社の処理能力に限らず、市場全体の参加者が十分な準備を整えているかどうかにも重点を置いている。同社は、一定期間に平均的なピーク取引量の約2倍の処理量に対応できるかどうかを確認するシミュレーションなど、業界全体での連携訓練やストレステストを行っている。
スペースX株の取引が開始された後、DTCCは週末を通じて担当者を配置し、同銘柄の清算・決済状況を監視する予定だ。市場は相互接続性が高く、1社で小規模な運営上の問題が発生しただけでも、システム全体へ波及する恐れがある。
ラサラ氏は、こうした取り組みはIPOを円滑に進めるための「ウォッチパーティー」の一環だとしている。同氏は「どこか1、2社に問題が発生しても、私たちはすぐに把握できる。そして業界全体として対応し、問題を封じ込めることで、市場全体に悪影響が及ばないようにできる」と強調した。
原題:Wall Street Braces for SpaceX With Stress Test, ‘Watch Parties’(抜粋)
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