女性の潜在労働力の活用が重要

労働投入量の減少は、労働供給力の低下を通じて日本の潜在成長率が長期にわたり停滞する一因となっている。

労働生産性の向上によって量の減少を一定程度補うことは可能だが、その効果には限界があり、量の減少に歯止めをかけることも重要である。

労働力の増加余地がかつてに比べて少なくなっていることは事実である。

労働力人口や就業者数が増加を続けてきたのは、就業を希望しながらも様々な理由で求職活動を行わないために非労働力化していた者(以下、潜在労働力人口)の多くが労働市場に参入するようになったためである。

労働力人口は2002年の6689万人から2025年には7004万人(+315 万人)へ増加した。一方、潜在労働力人口は、2002年の529 万人から2025 年には212万人(▲317 万人)まで減少した。

非労働力であった就業希望者の多くが労働市場に参入したことによって潜在労働力人口が大幅に減少したため、新たに労働市場に参入する余地は徐々に小さくなっている。

ただし、2025年の潜在労働力人口を男女別にみると、男性が70万人、女性が142万人となっており、女性は引き続き労働力人口の拡大余地が残っている。

近年、女性の労働力率は大幅に上昇しており、特に出産から子育てを担う年齢層で落ち込む「M字カーブ」の底が大きく上昇している。

たとえば、2015年時点の女性の労働力率は30~34歳で71.2%、35~39歳で71.8%だったが、2025年にはそれぞれ85.9%、82.7%まで10ポイント以上上昇した。

注目されるのは、労働力率の上昇とともに就業希望の非労働力人口を加えた潜在労働力率も上昇している点である。

このことは現時点の潜在労働力率が天井ではなく、育児と労働の両立が可能となるような環境整備を進めることにより、女性の労働力率のさらなる引き上げが可能であることを示している。

労働力人口の拡大余地が徐々に小さくなるもとで労働投入量を増やすためには、一人当たりの労働時間を増やすことも有効である。

日本の労働時間は減少傾向が続いており、近年では働き方改革の推進がそのペースに拍車をかけている。言うまでもなく、長時間労働の是正、無駄な労働時間の削減、効率的な業務遂行は望ましいことだが、労働時間を増やしたいと考えている就業者は少なくない。

就業者全体では労働時間減少希望者が1173万人と、増加希望者(445万人)を大きく上回る(2025年の数値)が、短時間就業者(週労働時間34時間以下)に限れば、増加希望者が291万人と減少希望者の234万人を上回る。

特に、女性の短時間就業者は増加希望者が198万人(減少希望者は144万人)と男性の短時間就業者の増加希望者93万人(減少希望者は90万人)の約2倍である。

年収別に労働時間増加希望者の割合を見ると、100万円未満の層では男性13.7%、女性14.1%、100~199万円の層では男性11.1%、女性12.8%となるなど、年収が低い層ほど増加希望者の割合が高い。

いわゆる「年収の壁」の問題で、一定の収入を超えることを避けて就業調整を行う人が相当数存在することが推察される。

課税最低限の引き上げなど年収の壁の解消に向けた取り組みは進められているものの、現時点では壁は完全には解消されていない。さらなる制度の見直しを通じた就業調整の緩和が求められる。

労働投入量の拡大余地は徐々に縮小しているが、女性については就業者数の増加余地が残っているほか、就業調整の解消や雇用の正規化により労働時間が増加する可能性がある。

労働供給制約が経済成長を下押しする状況を回避するためには、女性の潜在労働力の活用が鍵となるだろう。

(※情報提供、記事執筆:ニッセイ基礎研究所 経済研究部 経済調査部長 斎藤 太郎)

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