(ブルームバーグ):中国の習近平国家主席は8日、7年ぶりに北朝鮮を訪問し、両国の農業・技術協力と貿易を拡大させる意向を示した。一方、北朝鮮の核開発について、金正恩朝鮮労働党総書記との会談で公には言及しなかった。
中国国営新華社通信によると、習氏は平壌で金氏に対し、「揺るぎない支持」を表明。中国は「経済や貿易、農業、建設、科学技術、医療・保健などの分野で実際的な協力を拡大する」用意があると語った。
また、外交、法執行機関、軍事分野における交流の強化に加え、観光や人的往来の促進も呼びかけた。
習氏の北朝鮮訪問は7年ぶりで、同氏にとって今年初の外遊となった。習氏はトランプ米大統領、ロシアのプーチン大統領の訪問を相次ぎ受けたばかりで、外交活動を活発化させている。
習氏が今年最初の外遊先に平壌を選んだことは、中国が唯一の軍事同盟国である北朝鮮を重視していることの表れだ。今回の訪問は、核能力を劇的に増強しロシアとの関係強化に傾く北朝鮮に対し、中国の影響力をあらためて示す狙いがあるとみられる。
「朝鮮半島非核化」言及されず
新華社が報じた会談要旨によると、中国が公には長年掲げていた「朝鮮半島の非核化」への言及はなかった。この文言は金氏が昨年9月に北京を訪問して以降、中国の公式声明から消え、北朝鮮を事実上の核保有国として中国が黙認するようになったとの臆測を呼んでいる。
カーネギー国際平和財団の核政策プログラム上級研究員である趙通氏は、「中国は現在、北朝鮮の非核化で大きな進展を期待するのは当面現実的ではないと見ている」と指摘。「中国が米国との戦略的競争を最優先課題としていることと相まって、この認識の変化により、中国の外交政策の中で北朝鮮の核問題は優先順位が下がっている」と論じた。
習氏の到着前日には金氏の妹である金与正党副部長が朝鮮中央通信(KCNA)を通じた声明で、北朝鮮の「核保有国」としての地位は後戻りできない一線だと主張していた。
韓国と米国は、中国が朝鮮半島の非核化を支持する従来の立場を変える兆しがないか、習氏の訪朝を注視している。習氏は前回の2019年の訪朝時、金氏に対して朝鮮半島の非核化という目標に「尽力する」と伝えたほか、北朝鮮が米国との核協議で進展を示すことを国際社会は望んでいると述べていた。
習氏は非核化を公然と求める代わりに、北朝鮮にとって最も重要な政治的後ろ盾で経済の生命線を握っているのは中国だということを今回の会談であらためて示そうとした。
習氏は中朝の伝統的な友好関係を強調し、国際情勢がいかに変化しようとも、社会主義の理念を推進する金指導部への中国の支持は変わらないと述べ、「両国の共通利益と好ましい戦略的環境を守る」と表明した。
北朝鮮は今のところ会談要旨を発表していない。新華社によると、金氏は習氏を「朝鮮人民に最も敬愛される卓越した賓客」と称賛し、中朝関係を「壊せない」絆と表現した。
平壌に到着した習氏は、金氏と妻の李雪主氏の出迎えを受けた。その後、両首脳は金日成広場へ移動し、歓迎式典に臨んだ。式典では21発の礼砲が鳴り響き、両国の友情が「揺るぎない」ことをうたう中朝両言語の横断幕が掲げられた。
新華社によると、習氏は金氏とともに朝鮮人民軍の儀仗隊を閲兵し、兵士らは朝鮮語で習氏の健康を願う言葉を叫んだ。習氏の訪朝団には側近の蔡奇氏と王毅外相も加わっている。
習氏は、9日までの2日間の日程で滞在する予定。
ロシアとの連携
中国は長年にわたり、北朝鮮にとって最大の経済パートナーであり、唯一の正式な同盟国だった。だが2024年には、北朝鮮とロシアが包括的戦略パートナーシップ条約を締結し、有事の際に相互に軍事支援を行うことを約束した。
同年のプーチン大統領の訪朝では、両首脳の親密ぶりが随所で演出され、2人がロシア製リムジンに同乗して姿を見せる場面もあった。今回の習氏の訪朝では、両首脳がどのような親密ぶりを見せるかも注目される。
北朝鮮とロシアの関係は、首脳同士の個人的な親密さにとどまらない。北朝鮮はロシアのウクライナ侵攻を支援するため部隊を派遣し、その見返りとして、軍事技術や経済支援を得ている可能性が高い。
ロシア軍の攻勢は今年に入って勢いを失っており、アナリストらは、ロシアの立場の弱まりが金氏による習氏招待の一因になった可能性があるとみている。北朝鮮は伝統的に、中国とロシアの双方との関係をてんびんにかけながら利益の最大化を図ってきた。
日本やフィリピン、オーストラリアを含む米国の同盟国の間で軍事協力が深まっていることも、中国と北朝鮮が関係強化を図る動機になっている可能性がある。
習氏が北朝鮮の核保有の権利を明確に認めるような動きに出れば、北朝鮮にとっては大きな外交的成果だ。地域各国の首脳は、中国が長年維持してきた立場から転換する兆候がないか注視している。
原題:Xi Pledges Deeper Ties With Kim While Avoiding Nuclear Issue (1)(抜粋)
(中朝首脳会談の内容などを付け加えます)
--取材協力:Jing Li、Soo-Hyang Choi、Heesu Lee.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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