(ブルームバーグ):中国の習近平国家主席は、8日から2日間の日程で北朝鮮を訪問する。核戦力の増強を進め、ロシアとの同盟関係を深める金正恩朝鮮労働党総書記に対し、中国の影響力を改めて示す狙いがあるとみられる。
習氏にとって平壌訪問は7年ぶり。トランプ米大統領とロシアのプーチン大統領を北京に相次いで迎えてから数週間後のタイミングとなる。
今回の訪問は、北朝鮮がロシアとの防衛協力を通じて外交的な選択肢を広げるなかでも、中国が依然として最も重要な政治的後ろ盾であり、経済面の生命線であることを、国際社会や金氏に改めて示す意味合いを持つ。
習氏の一連の外交は、地政学的な亀裂が世界で広がるなか、中国があらゆる陣営と関係を保てる安定化役であることを内外に示すものだ。対照的に、トランプ氏はイランとの戦争や関税引き上げを通じて同盟国との溝を深め、世界市場を動揺させている。
韓国と米国は、中国が朝鮮半島の非核化を支持する従来の立場を変える兆しがないか、習氏の訪朝を注視している。習氏は前回の2019年の訪朝時、金氏に対して朝鮮半島の非核化という目標に「尽力する」と伝えたほか、北朝鮮が米国との核協議で進展を示すことを国際社会は望んでいると述べていた。
カーネギー国際平和基金の核政策プログラム上級研究員の趙通氏は「北朝鮮に対する影響力を維持・拡大するため、両国の関係改善を優先すること」が、習氏にとっては核問題より重要になっているとの見方を示した。
習氏の前回訪朝から状況は大きく変わった。金氏は核兵器開発を加速させており、数日前には新たなウラン濃縮施設とみられる施設を公開したほか、核物質の生産能力が倍増したと誇示した。またイラン戦争は、体制維持には実戦配備可能な核戦力が不可欠だとの金氏の認識をさらに強めた可能性が高い。
金氏の妹である金与正党副部長は、朝鮮中央通信(KCNA)を通じた声明で、北朝鮮の「核保有国」としての地位は後戻りできない一線だと述べた。
中国が北朝鮮を事実上の核保有国として受け入れつつあるとの見方もある。昨年9月に金氏が北京で習氏と会談した際、中国側の発表には非核化への言及がなく、過去の首脳会談後の発表とは大きく異なっていた。中国が公表した最新の核不拡散に関する白書でも、朝鮮半島の非核化は目標として明記されていない。
習氏が平壌を訪問するなか、韓国の李在明大統領も就任1年を迎え、自身の外交成果をアピールする見通しだ。李氏はトランプ氏との関係を良好に保ち、日本との関係悪化を回避したほか、中国との関係も改善してきた。ただ、北朝鮮問題はなお課題として残っている。李氏の対話の呼びかけにも北朝鮮は応じていない。
習氏が今年最初の外遊先に平壌を選んだことは、中国が唯一の軍事同盟国である北朝鮮を重視していることの表れだ。前回の訪朝では、彭麗媛夫人を伴い、金氏とともに平壌市内をオープンカーで巡ったほか、両国の国交樹立70周年を祝う大規模な式典にも出席した。
両国関係は新型コロナ禍で冷え込んだ。北朝鮮が自ら孤立を深めたことで中国との貿易が落ち込み、ロシアとの関係強化も中朝関係を複雑にした。昨年の軍事パレードに合わせて金氏とロシアのプーチン大統領が北京を訪問した後、中朝関係は改善に向かい始めた。両国は最近、首都間を結ぶ鉄道および直行便の運行を再開した。
今年に入り複数の要人を迎えている金氏にとって、世界第2位の経済大国を率いる習氏を歓待することは、国際的な指導者としての存在感をさらに高める機会となる。また、今回の一連の日程に金氏が10代の娘を同伴させるかどうかも関心を集めそうだ。娘は近年、父親に同行して公の場に姿を見せることが増えている。
ロシアとの連携
中国は長年にわたり、北朝鮮にとって最大の経済パートナーであり、唯一の正式な同盟国だった。だが2024年には、北朝鮮とロシアが包括的戦略パートナーシップ条約を締結し、有事の際に相互に軍事支援を行うことを約束した。
同年のプーチン大統領の訪朝では、両首脳の親密ぶりが随所で演出され、2人がロシア製リムジンに同乗して姿を見せる場面もあった。今回の習氏の訪朝では、両首脳がどのような親密ぶりを見せるかも注目される。
北朝鮮とロシアの関係は、首脳同士の個人的な親密さにとどまらない。北朝鮮はロシアのウクライナ侵攻を支援するため部隊を派遣し、その見返りとして、軍事技術や経済支援を得ている可能性が高い。
ロシア軍の攻勢は今年に入って勢いを失っており、アナリストらは、ロシアの立場の弱まりが金氏による習氏招待の一因になった可能性があるとみている。北朝鮮は伝統的に、中国とロシアの双方との関係をてんびんにかけながら利益の最大化を図ってきた。
日本やフィリピン、オーストラリアを含む米国の同盟国の間で軍事協力が深まっていることも、中国と北朝鮮が関係強化を図る動機になっている可能性がある。
習氏が北朝鮮の核保有の権利を明確に認めるような動きに出れば、北朝鮮にとっては大きな外交的成果だ。地域各国の首脳は、中国が長年維持してきた立場から転換する兆候がないか注視することになりそうだ。
原題:Xi Visits North Korea to Reassert Influence Over Emboldened Kim(抜粋)
--取材協力:Jing Li、Soo-Hyang Choi、Heesu Lee.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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