(ブルームバーグ):自動車メーカーのステランティスは、中国の提携先である浙江零跑科技(リープモーター)と、カナダでの電気自動車(EV)生産に向けた選択肢を協議している。事情に詳しい関係者が明らかにした。カナダが中国企業の受け入れに踏み切り、自動車業界の再編が加速している。
非公開情報を理由に匿名で語った関係者によると、協議は初期段階にある。実現すれば、カナダのカーニー首相が1月に中国の習近平国家主席と、中国製EVの関税引き下げで合意して以降、中国自動車メーカーによるカナダ投資で初の大型案件となる。
この合意の一環としてカーニー政権は、カナダの自動車産業で「信頼できるパートナー」との新たな中国合弁投資を3年以内に誘致する意向を示していた。
一方、米国の主要な貿易相手国であるカナダで中国主導の車両生産が検討されていることは、トランプ米大統領が導入した外国製乗用車・トラックの関税の波及効果を浮き彫りにしている。これらの関税は北米で統合された自動車産業を混乱させ、自動車メーカーに数十億ドル規模の損失を与えている。
米政権当局者は、中国車の対米輸出の抜け道としてカナダが利用されれば報復のリスクがあると、カーニー首相に重ねて警告してきた。トランプ氏は1月、カナダが中国と貿易協定を締結した場合、対米輸出の全品目に100%の関税を課すと警告した。

カナダでの協議は、オンタリオ州ブランプトンにあるステランティスの稼働停止中の組立工場が焦点となっている。同工場では長年にわたり数千人の労働者がレイオフ状態にあるが、「ジープ」のSUV(スポーツタイプ多目的車)新型モデルを生産する計画だった。
しかし昨年、トランプ氏が関税を発表した後、ステランティスはこの計画を撤回し、SUVの生産を米国の工場に移管した。この決定はカーニー政権の怒りを買い、政府はステランティスに対する多額の補助金について返還を求める可能性を示唆した。
その後、ステランティスは同工場の今後の計画を巡り、カナダのジョリー産業相と協議を続けている。
現在の協議には、急成長する零跑との提携による生産の可能性も含まれる。ステランティスは2023年に零跑の株式20%を取得し、翌年にはEVの世界生産・販売を目的とする合弁会社リープモーター・インターナショナルを設立した。

ジョリー産業相は声明で、政府と同社が協議中であることを認めた。その上で、「自動車分野に新たな投資が行われる場合、労働者や部品供給企業を含めカナダのサプライチェーンが優先される」とした。ただ零跑など中国企業には言及しなかった。
カナダでステランティスと零跑が合弁事業を行う場合、どのような条件が課されるかは現時点で不明だ。関係者によれば、協議は予備的な段階にあり、決定は下されていない。
カーニー政権は、中国企業の参入に慎重な労働組合や部品メーカーと難しい交渉を迫られる見通しだ。ブランプトン工場には約3000人の組合員がいる。
ステランティスの広報担当者は、ブランプトン工場に関してあらゆる選択肢が検討されており、プロセスはまだ初期段階にあると強調した。零跑の担当者はコメントを控えた。
原題:Stellantis in Talks to Make Chinese EVs at Idle Canada Plant (3)(抜粋)
--取材協力:Linda Lew、Rick Clough.もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp
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