(ブルームバーグ):原油や液化天然ガス(LNG)などの価格高騰で、火力発電の運営コスト上昇が懸念されている。電力会社によっても多少異なるが、日本全体では化石燃料への依存度は7割程度で、中長期での影響は避けられなさそうだ。電気代はいつから、どの程度上がるのか?
電気代はいつから上がるのか?
家庭の電気料金は、最短で6月に使用する分から上昇する可能性がある。原油・LNG・石炭の燃料価格の変動を、毎月の電気料金に反映する燃料費調整制度があるためだ。3-5カ月前の燃料価格の平均を基準値と比べ、上振れした分を料金に転嫁する。
燃料は長期契約しているものもあるが、スポットで仕入れているものもあり、イラン戦争を背景に3月の燃料価格は上昇すると考えられる。
電気事業連合会の森望会長(関西電力社長)も19日の記者会見で、今の燃料コスト上昇が反映されるのは「夏前ぐらい」と述べていた。
高市早苗首相も24日に開いた中東情勢に関する関係閣僚会議で、電気・ガスの料金がただちに上昇することはないと認識していると述べていた。
また電事連の資料によれば、日本が多く使うLNGの長期契約価格も固定ではなく、3カ月程度前の原油価格に連動するものが多い。そのため現在の原油価格の高騰の影響は11月ごろまで続く可能性がある。
どの程度上がる可能性があるのか?
大和証券のエネルギー担当アナリストの西川周作氏は24日付けのリポートで、市況高騰が続いた場合、家庭用の全国平均単価は2026年度に前年度比5%高、27年度に9%高になると試算している。同試算では、原油の輸入価格が1バレル=150ドル、一般炭が1トン=150ドルなどを前提としている。
燃料価格の上昇が続けば燃料費調整制度による上乗せだけではなく、基本料金を含む値上げが行われる可能性もある。
ロシアのウクライナ侵攻時には燃料費調整の仕組みだけでは追い付かず、東京電力ホールディングスや東北電力など大手7社が22年から23年にかけて「規制料金」の引き上げを国に申請し、承認された。東京電力の場合、平均的な家庭で月2611円程度の値上げとなった。
23年のエネルギー白書によれば、22年12月当時の電気料金は、1年前に比べ家庭向けで約3割上がったという。
電気料金を巡っては、16年4月の電力自由化に伴い新規事業者も発電したり電力を販売したりできるようになり、自由料金が導入された。ただ経過措置として規制料金も残っている。
地域による違いもあるのか?
電力会社はそれぞれ電源構成や、依存している燃料が異なる。そのためすでに料金に差が付いており、燃料高騰に伴ってその差が拡大する可能性もある。
例えば、原子力発電所が稼働している関西電力と九州電力は、2024年度の実績で火力発電の割合が4割以下となっており、22年のエネルギー危機の際に、規制料金の値上げをしていなかった。
日本の火力発電所では石油を燃料に使っている割合は非常に小さく、石炭やLNGが主な燃料だ。特に東京電力や中部電力ではLNGを多く使っていることがわかる。LNGは、調達の分散が進んでおり、中東への依存度は1割程度と低い。そのため直近で調達に懸念は生じていないが、LNGの価格はイラン戦争前に比べて高騰している。
国の補助の可能性は?
イラン戦争を背景とした電気料金上昇を対象とした具体的な補助策は、現時点で打ち出されていない。政府が物価高対策として1月から実施していた電気・ガス料金の補助は3月末で終了するため、家計の負担感が増す中での政府のかじとりに焦点が集まる。
一方で自由民主党はイラン情勢の悪化を受けて開いた関係合同会議を開催。国民生活や経済活動へのガソリン、電気・ガスなどの価格高騰の影響を抑制するため、予備費の活用を含めて前倒しであらゆる対策を検討することなどを含めた緊急提言を策定。13日に高市首相に提言していた。
エネルギー経済社会研究所の松尾豪代表は、電気・ガス料金の補助はスダグフレーションの発生を遅らせる可能性があると話す。
同氏は、財政健全化や国際水準とのかい離などの観点から、通常エネルギー料金への補助に対して反対の立場をとっているが、スダグフレーションに対する政策手段が限られる中で、今回に限っては実施する価値があると指摘する。
--取材協力:小田翔子.
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