(ブルームバーグ):マイケル・アルファロ氏はちょうど父親になろうとしていた時期に、自身のヘッジファンド立ち上げに向けた準備を進めていた。
そこに有能なトレーダーには日常茶飯事とも言える引き抜きの誘いが大手マルチ戦略型ファンドからやって来た。独立か安定か、決断を迫られた。

やがてリクルーターはアプローチを変え、出産を控えたアルファロ氏が意思決定に集中できるよう、夜間のベビーシッターを手配した。
現在37歳のアルファロ氏は、同ファンドを含む複数の誘いを最終的に断ったが、そのベビーシッターは引き続き雇用している。
ここにきて大手マルチ戦略ファンドへの抵抗はじわり広がっている。ファンド側は数百万ドル規模の高報酬を提示するなど、人材の確保や引き留めに注力するが、傭兵的なキャリアを避ける、あるいは離れるトレーダーが確実に増えている。
自ら顧客を開拓し、より多くの裁量を得られる方が充実感が高いと感じるためだという。結果的に、数十億ドル規模の投資資金に容易にアクセスできる環境を手放すことになってもだ。
アルファロ氏は自身の決断について、「提示された条件は間違いなく魅力的で、考え込まずにはいられないようなものだった。しかし、ガロ・パートナーズの立ち上げは自分にとって非常に重要だった」と語る。
ファンド支援会社ボレアリス・ストラテジック・キャピタル・パートナーズのデータによると、マルチ戦略ファンド大手からの離職者は、昨年の新興ヘッジファンドの17%を占め、2年前のほぼ2倍となった。

これら新規ファンドの創業者は、5兆ドル(約795兆円)規模のヘッジファンド業界に君臨する企業の多くも、かつては寮の一室や即席のオフィスから出発した独立志向のリスクテイカーだったと指摘する。
シタデルの創業者ケン・グリフィン氏は1987年、ハーバード大学在学中に、母親や祖母、その他2人の投資家から集めた26万5000ドルを元手に転換社債の取引を始めた。レイ・ダリオ氏はニューヨークの自宅アパートの一室でブリッジウォーター・アソシエーツを創業した。
ポイント72のスティーブ・コーエン氏は、父親が購読していたニューヨーク・ポストに掲載された銘柄を追うことから投資を始め、その後は取引価格や出来高の分析から相場の変動を予測する手法を独学で身につけた。

3人はいずれも、史上屈指の高収益を誇るヘッジファンドを率いるに至った。
だが、アルフォンソ・ペッカティエロ氏が昨年、自身のマクロ系ヘッジファンドの立ち上げを目指していた際、マルチ戦略ファンド大手2社から侮辱的な反応を受けた。「最初の売り込みは決まって『そんなミッキーマウスのような小さなファンドで何をしているんだ』というものだった」という。同氏はかつてINGグループで200億ドル規模の投資ポートフォリオを運用していた。
両社は3億ドルの運用資金に加え、チーム構築のための資金提供も提示した。ただし条件として、厳格なストップロスが課され、短期的に損失が出た場合にはポジションの解消を余儀なくされる可能性があった。また、ソーシャルメディアでの発信を縮小し、2022年以降育ててきた調査会社マクロ・コンパスを閉鎖することも求められた。
「断った。自分自身の会社で、自分の投資家、自分の戦略、自分の時間軸、そして自分の望む場所にいるチームで運用したい」とペッカティエロ氏。現在の運用資産は依然として3億ドルを大きく下回るが、複数のマルチ戦略ファンドと「セパレートリー・マネージド・アカウント(SMA)」と呼ばれる一任勘定で資金を運用する協議を同氏は進めている。
原題:Traders Are Ditching Giant Hedge Funds to Set Their Own Terms(抜粋)
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