日本でも中国コンテンツを目にする機会が増加
もっとも、この衝撃は自身のなかで一過性のものとなり、その後、取り立てて中国のコンテンツ事情をフォローしていなかったのだが、ここ数年、様々なジャンルで中国のコンテンツ作品を目にする機会が増えた。
例えば、2019年に邦訳が出版されたSF小説で、映像化された劉慈欣作の『三体』。
これもまた遅ればせながら、一昨年に書店の販促活動で中国のSF作品がアツいと知り、軽い気持ちで読み始めたが、なかなかどうして、重厚かつ斬新なストーリー展開に圧倒された。
一気に読了の後、Netflixや中国国内で映像化されたドラマも視聴し、鑑賞後はすっかり「三体ロス」に陥ってしまった。
また、タイムリープもののアニメの『時光代理人』もクオリティが高かった。
動画配信アプリでふと目に入った綺麗な作画と面白そうなあらすじにつられ、中国の作品とは知らずに見始めたが、サスペンスや人間ドラマなど様々なジャンルがうまく融合されており、伏線回収などストーリーもよく作り込まれていた。
大人でも楽しめる良作で、シーズン2まで一気見してしまったが、まだ続くようでシーズン3の発表が待たれるところだ。
コンテンツが面白いか面白くないかは究極的には好みの問題かもしれないが、上で挙げた作品やアーティストは、海外でも一定の評価を受けているのも事実だ。
最も代表的なのは『三体』で、2014年に英語版に翻訳された後に世界で大ヒットし、SF界のノーベル文学賞といわれるヒューゴー賞をアジア人作家として初めて受賞、オバマ元米大統領も愛読していたのは有名な話だ。
これに比べるとニッチだが、Stolenのサウンドは冒頭で紹介したように欧米の大物プロデューサーに衝撃を与えたほどだし、『時光代理人』(シーズン1)は、英語圏を中心にポピュラーなアニメ・マンガのコミュニティサイト「MyAnimeList」のスコアランキングにおいて、日本作品が多数を占める2万超の中で、59位と想像以上に健闘している。
さらに他の例を挙げれば、数年前に車内や街中の広告などでよく見かけた「原神」や「崩壊:スターレイル」、24年に世界でヒットした「黒神話:悟空」といった人気ゲームも(筆者自身はプレイしたことはないものの)中国の作品だし、25年にはポップマートのキャラクター「LABUBU」も世界で大ヒットした。
26年の元日には、近年の中国の2Dアニメとして中国外でも評価の高い『羅小黒戦記 ぼくが選ぶ未来』(2019年)がEテレで一挙再放送されていた。
筆者は中国の経済動向は定点観測してきたが、コンテンツ動向は定点観測してきたわけではない。
そんな素人の眼にも中国コンテンツが目に飛び込んでくるようになり、かつそれが面白いということは、それだけ中国コンテンツの裾野が広がり、海外でも存在感を高めてきたということだと思う。
そうだとすれば、まだ広く知られていないだけで、他にもクオリティが高い中国コンテンツが実はたくさんあるのではないか―――そう思い、調べてみると、映画・アニメでは、最近深刻化しているオンラインカジノ犯罪を描いた『ノー・モア・ベット:孤注』(2023年)や、鬱々とした雰囲気と世界観が癖になる劉健監督のアニメ映画『大世界~HAVE A NICE DAY』(2017年)などの作品、音楽ではWang OneやNINEONE、アートでは曹斐や陸楊、静電場朔などのアーティストが存在し、ポップな作品から尖った作品まで幅広いコンテンツが生み出されていることを知った。