米連邦最高裁がトランプ大統領による広範な緊急関税措置を無効と判断したことに対し、各国政府は慎重な反応を示している。既存の合意を再確認する国がある一方、トランプ氏の次の動きを見極めようと静観する国もある。

韓国政府は、今回の判決により、同国製品に現在適用されている15%の上乗せ関税は無効になると指摘しながらも、昨年締結した通商合意の履行に向けた協議を継続すると付け加えた。19日に対米輸出への税率を19%とする合意をまとめたばかりのインドネシアは、今回の判決と、別の法令に基づいて世界的な関税を課そうとするトランプ氏の動きを注視していると述べた。

米政権が昨年導入した関税措置の大部分について、最高裁が無効と判断したことを受け、トランプ大統領は20日、世界各国に10%の関税を課す布告に署名した。翌21日には、これを15%に引き上げると表明した。

最高裁判決は、トランプ政権の国内経済アジェンダを混乱させることになる。また、不安定な中東情勢やグリーンランドの主権、ロシア産原油の購入に至るまで、地政学的な問題で同盟国や敵対国を屈服させるために輸入関税という脅しを利用してきた同氏にとって打撃となった。より手続きが遅く、適用範囲も限定的な関税権限の下で、大統領がこれまでのような即効性のある影響力を維持できるかどうかが、今後の外交政策における鍵となる。

今回の最高裁判決前には、15%の上乗せ関税に直面していた欧州連合(EU)は、23日に欧州議会の議員による緊急会合を開き、米国との間で保留となっている通商合意を再検証する。欧州議会の通商委員会は、24日に米・EU合意の批准に向けた採決を行う予定だった。

フランスのマクロン大統領は21日、パリで開催された農業フェアで記者団に対し、「われわれはこの結果を注意深く見守り、それに応じて対応していく。もしこれが事態の沈静化に役立つのであれば、それは良いことだ。国際レベルで事態を落ち着かせることに集中する必要があると考えている」と語った。

ANSA通信によると、イタリアのタヤーニ外相は「関税が撤廃されるのは常に良いニュースだが、大きな変化はないだろう」と語った。

世界で最も低い10%の上乗せ関税率が適用されていた英国の政府報道官は、今回の判決が米英関係に与える影響を把握するため、米政権と協力していくとコメントした。トランプ政権との合意の一環として、英国には鉄鋼や医薬品、自動車の関税で優遇税率が適用されており、これらの優遇措置は維持される。

ロンドンの戦略コンサルティング会社フリント・グローバルの通商専門家、サム・ロウ氏は、「英国の観点からすれば、最良の選択肢であり、政府が取るであろう道は、ほとんど何も言わないことだ。対米関係におけるわれわれの主な関心事である自動車と鉄鋼は、今回の判決の影響を受けない」と指摘した。

USMCA

米国の2大貿易相手国であるメキシコとカナダは、新たな関税の対象から外された。ホワイトハウスは、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)の下で出荷される多くの物品に対する免税措置を継続すると説明した。それでも、同協定は今年見直しが行われる予定であり、米政府は変更の可能性を示唆している。

メキシコのシェインバウム大統領は、「われわれは判決を慎重に検討し、喜んで意見を述べるつもりだ」と語った。

USMCA交渉責任者であるメキシコのエブラルド経済相は、「慎重さ」を求めるとともに、メキシコの対米輸出の85%以上が関税の対象外であり、鉄鋼、アルミニウム、自動車は最高裁判決の影響を受けない他の手段を通じて課税されていると指摘した。

ブラジルのアルキミン副大統領は、データセンターや戦略鉱物などの非関税分野を含め、米国との交渉を継続すると述べ、ルラ大統領が「常に対話と交渉を支持してきた。それは今後も変わらない」と説明した。

ニューデリーでの記者会見で握手するインドのモディ首相(右)とブラジルのルラ大統領(2月21日)

ルラ氏は21日、ニューデリーでのインドのモディ首相との会談で、今回の判決について話し合った。外交関係者が記者団に語ったところによると、両首脳は「この影響を調査し、さらなる進展を待つ必要がある」ということで一致した。米国の関税に対する両国の次なるステップの調整については話し合わなかったという。同関係者は「まだそこまでの段階には達していない」と述べた。

ルラ氏とトランプ氏は3月にワシントンで会談する予定となっている。

訪中予定

春節(旧正月)の連休中である中国からすぐには反応はなかった。最高裁の判決が出た日、トランプ氏は習近平国家主席との会談のため、3月31日から4月2日まで北京を訪問する計画を発表した。

米中の対立は関税にとどまらず、希土類(レアアース)や航空機エンジン、半導体設計ソフトウエアなどの輸出管理にまで範囲が拡大したが、両国は昨年、通商対立の「停戦」で合意。両首脳はこれの維持を目指すことになる。ただし今回、トランプ氏は昨年ほど即効性のある交渉材料を持たないことになる。

それでもホワイトハウス当局者は、政権の新しい関税戦略が数週間以内に展開される間、米国と合意済みの諸国が約束を果たすと期待しているとコメントした。

20日のホワイトハウスの発表によると、新たな関税は米東部時間24日午前0時1分(日本時間同日午後2時1分)に発効する。

米国との通商協定をまだ批准していないマレーシアも、事態のさらなる進展を見守るとしている。一方、カンボジアは米国との合意の批准を進めると表明した。

元米国務次官補(東アジア・太平洋担当)で、現在はアジア・グループのパートナーであるダニエル・クリテンブリンク氏は「アジアのパートナーの大半は慎重に臨むと予想される。今後数週間で双方が影響を精査する間、既存の合意はおおむね維持されるだろう」と分析。「現政権には、進行中の通商交渉で影響力を生み出す方法がまだ残っている」と指摘した。

原題:World Leaders Scope Out US’s Next Steps After Tariff Ruling (1)(抜粋)

--取材協力:Sudhi Ranjan Sen、Phil Serafino、Gonzalo Soto、Daniel Carvalho、Jorge Valero、Ellen Milligan、Philip Aldrick、Donato Paolo Mancini、Philip Heijmans、Daniela Wei、Netty Idayu Ismail、Heesu Lee、Nectar Gan、Ben Otto、Suttinee (Ying) Yuvejwattana、Fran Wang、Ramsey Al-Rikabi.記事に関するブルームバーグ・ニュース・スタッフへの問い合わせ先:Singapore Shamim Adam sadam2@bloomberg.net記事についてのエディターへの問い合わせ先:Daniel Ten Kate dtenkate@bloomberg.netBrendan Murray、Angela Cullen

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