日本のメリットがわかる情報開示が必要
こうしてみると、第一弾に選ばれたプロジェクトは、いずれも日本側のメリットが見えやすいもので、日本政府は「ウィンウィンの関係だ」と成果を強調しています。また、こうした複雑なスキームを作りあげた上で、個別に案件を積み上げるのは、日本の官僚組織ならではの仕事ぶりで、韓国やEUなど他国にとってもモデルを提供した形です。
もっとも日本企業による設備や機器の納入や、日本企業による産出物の調達の価格や条件は、今後、個別に詰めていくものです。本当に「良いビジネス」になるかどうかは、これからです。
また資金面を見ても、国際協力銀行による出資や融資の額や条件も、具体的には全く明らかにされていません。さらに、資金の多くは日本の銀行が日本貿易保険(NEXI)の保証を受けて融資することになりますが、その金利も明らかではありません。第一弾の発表まで時間がかかったのは、金利などの条件が難航したからだという報道もありますが、外からは見えません。
民間企業の個別のビジネスに関わるだけにすべてを公にできるわけではないでしょうが、最終的に焦げ付いた場合には、日本の公的資金に損失を与えるわけですから、今後も適切で積極的な情報開示が求められています。
国内アピール優先のトランプ政権にリスク
オハイオ州、ジョージア州は、大統領選挙では典型的なスイングステート(激戦州)です。テキサス州も選挙人の多い重要州です。3つの案件の場所を見ても、トランプ大統領が日本による対米投資プロジェクトを、国内政治でのアピール材料に使っていることは明らかで、それは評判の悪い自らの関税政策を正当化する材料にもなっています。
それだけに、うまく行かなくなれば、再び、関税引き上げで脅しをかけてくる可能性は、考えておいた方が良いでしょう。そうした場合でも、日本にとって、きちんとメリットがある形で、案件を積み上げることができるかが、非常に重要です。また、将来的に政権が交代し、アメリカが再び脱炭素に舵を切るようなことが起きれば、巨大な火力発電や原油開発プロジェクトが止まるリスクもあるでしょう。
今回決まった第一弾は総額5500億ドルのうち、まだ1割にも達しません。上記のようなリスクを意識しながら、第二弾、第三弾を、日本の利益になるように、つくりあげていくという難しい作業が続きます。
もちろん、アメリカへの投資の知恵を絞るだけでなく、同時並行で、日本国内への投資を促進する政策を推し進めることが、何より重要な、政府の仕事です。
播摩 卓士(BS-TBS「Bizスクエア」メインキャスター)