自民党と日本維新の会の連立与党が衆院選で圧勝したことを受け、高市早苗首相の経済政策「サナエノミクス」は推進力を得る。消費減税の議論にも弾みがつきそうだが、具体的な財源探しは暗中模索が続く。

高市首相は9日の記者会見で、飲食料品にかかる8%の軽減税率を2年間ゼロとする方針について、今後立ち上げる「国民会議」でスケジュールや財源の在り方の検討を進めると説明。「夏前には国民会議で中間とりまとめを行いたい」とした。

財源を巡っては赤字国債に頼らないと改めて強調した。「補助金や租税特別措置の見直し、税外収入などにより、2年分の財源を確保した上で、できるだけ早く実現できるよう知恵を絞っていく」と話した。

消費減税は、所得税などの減税と現金給付を組み合わせて中低所得者を支援する「給付付き税額控除」を導入するまでの「つなぎ」の措置と位置付けた。

Photographer: Kiyoshi Ota/Bloomberg

消費減税に伴う税収減は年間5兆円と推計され、穴を埋めるのは容易ではない。片山さつき財務相は8日のテレビ東京の番組で、基金や特別会計などを総点検して財源を集める考えを示した。

中でも注目されているのが兆円単位の剰余金が期待できる外国為替資金特別会計(外為特会)だ。為替介入に備える目的で設けられており、保有する外貨資産の利子収入を歳入、政府短期証券の利払いを歳出とする。歳入と歳出の差額が剰余金となり、原則として最大7割を一般会計の税外収入に繰り入れることができる。

過去には例外的に外為特会の剰余金を全額繰り入れたこともあり、今回も政策財源となる可能性がある。

明治安田総合研究所の小玉祐一フェローチーフエコノミストは、消費減税の財源について、税収の自然増に加え、外為特会などでもやりくりすれば「2年間は何とかなる可能性はあるだろう」と指摘する。一方で「一度下げた税率を上げるのは政治的に難しく、2年で終わらない可能性がある」とも話した。

財務省によると、2025年度の外為特会の剰余金見込み額は約4兆5000億円で、このうち3兆1000億円余りを26年度一般会計に繰り入れた。仮に全額繰り入れていれば、1兆4000億円程度の追加財源が捻出できた計算だ。

また、外為特会の剰余金は国内外の金利動向などに左右されるため、安定財源とみなせるかどうかは議論の余地がある。剰余金は24年度に約5兆3600億円と過去最大を記録したが、日米金利差の縮小で今後は減少する可能性もある。繰り入れた分の一部はすでに防衛力強化の財源にもなっている。

片山財務相は10日の閣議後会見で、外為特会の剰余金を全額活用する可能性について「今のところ何らかのスタンスがあるということは全くない」と述べるにとどめた。

国債発行のコスト意識

高市首相は、減税財源としての赤字国債の発行を封じ、財政悪化への懸念が高まらないよう配慮を見せる。財政健全化の指標として用いられる債務残高対国内総生産(GDP)比の安定的な引き下げを目指すが、債務残高そのものが巨額であることに変わりはなく、金利上昇で利払い費が増えて財政が圧迫されるリスクは残る。

債券市場では高市政権の拡張財政が意識され、長期金利は足元で落ち着いているものの上昇基調が続いている。

政府が市場から資金を調達するための国債発行も難路を迎える。主な買い手だった生命保険会社の資本規制対応が一巡したこともあって、超長期債は強い需要が見込めない現状がある。

財務省は26年度の発行計画で20年、30年、40年債の発行を減額した一方、2年債と5年債の増額で対応したが、金利上昇局面で国債の年限短期化が進めば、借り換えリスクにつながる恐れがある。

慶応義塾大学・経済学部の土居丈朗教授は「国債の年限構成を相当工夫しないと円滑消化できないレベルに達している」と指摘。低金利時代の「国債発行はゼロコスト」といった考え方ではなく、国債発行に伴うコスト意識を持って財政運営に当たることが必要と訴える。

(片山財務相の発言を追加して更新します)

--取材協力:氏兼敬子.

もっと読むにはこちら bloomberg.com/jp

©2026 Bloomberg L.P.