円安のデメリットには一切触れず
しかし、この釈明には相当無理があります。演説での発言を読めばわかる通り、高市総理は、かつての円高の時のデメリットと、今の円安のメリットを具体的に説明して、「そっちがいいのか」、「助かりました」などと評価しています。その一方で、円高の時のメリットや、今の円安のデメリットには、全く触れていません。どうみても円安のメリットを説いています。
確かにそのあとに、「どっちがいいと総理が言うべきことじゃない」とは述べていますが、言いたいことを言った後に、立場上の「留保」をつけるという、政治家の常套文法です。だからこそ、各社一斉に報じたのであって、それを、報道機関の「誤解」などと言うのは、どうでしょうか。
日米政府間の政策努力が台無しに
総理の発言の最大の問題は、日米通貨当局による円安是正の努力を台無しにしたことです。1月の日銀の政策決定会合を機に円安が1ドル159円台まで進んだことを受けて、日米の通貨当局は23日に東京とニューヨーク市場で、為替取引の状況について具体的に聞き取りを行う「レートチェック」を、それぞれ実施したと見られています。これを受けて、円相場は152円台まで円高に巻き戻したのでした。介入という資金を使わずに円安是正につなげた、今回の「レートチェック劇」は、クリーンヒットと高く評価されています。
ところが、高市発言で円相場はあっという間に円安方向に反転、一気に1ドル155円台へ戻った後も、影響はジリジリ拡大し、5日には157円台と、結局、レートチェック効果の7割もが失われてしまったのです。
通貨を司る政府機関が、懸命にアメリカ政府と連携しながら円安を押し戻そうとしている時に、当の政府の代表者が、その効果を打ち消すような発言を平気でするというのは、ちょっと信じられない事態です。今後の通貨当局間の連携にも微妙な影響を及ぼしかねません。