(ブルームバーグ):東京証券取引所へ昨年2月に上場した技術承継機構の株価はおよそ1年で3倍となり、2025年に新規株式公開(IPO)銘柄で上昇率トップだ。後継者不足に悩む製造業を買収し、企業価値の増大を目指す戦略が評価されている。
上場日終値を起点とした技術承継機構の株価上昇率は29日時点で3倍と、昨年東証に上場した59社(TOKYO PRO MARKET除く)の中で1位。上場時に170億円だった時価総額は直近で900億円まで拡大した。
後継者の不在などで事業承継を求める中小の製造業企業を買収し、経営を支援するのが同社のビジネスモデル。プライベートエクイティ(PE)ファンドなどの投資会社と違い、売却差益を求め将来手放す考えは持っていない。
ブルームバーグのデータによると、昨年発表された日本企業が関連する合併・買収(M&A)総額は36兆円と過去最大に達した。豊田自動織機やNTTデータグループなど数兆円規模の案件もあり、日本のM&A市場が盛り上がる中で後継者に悩む企業が事業譲渡に動くケースも増えている。米国のPE大手ベインキャピタルやカーライル・グループが承継ビジネスに参入しているのはその証左だ。
信用調査会社の帝国データバンクが全国約27万社を対象にした調査によると、昨年の後継者不在率は半数の50%。5年前から15ポイント低下しており、事業承継の重要性が中小企業経営者の間で浸透してきた可能性を示している。
アイザワ証券投資顧問部の三井郁男ファンドマネジャーは、一つの工程の部品やサービスが欠けると影響が大きくなる製造業では、後継者問題で高技術企業が存続できない事例も多いと指摘。技術承継機構には産業のサプライチェーン(供給網)を守る姿勢があり、「日本の構造的問題にマッチするビジネスモデルだ」と評価する。
これまで工事用の発光ダイオード(LED)文字表示看板を手がけるティオック、光学用フィルム加工装置の篠原製作所、フォークリフト買い取り・販売のアドバンスなどを買収した技術承継機構では、傘下企業の採用活動やグループ内での受発注、社長同士の交流会開催などで各社の経営を支援している。
新居英一社長はブルームバーグのインタビューで、株式上場で企業のオーナーと対話しやすくなり、アドバイザーによる紹介の増加や買収先企業の採用活動への恩恵など「活動全般でプラスだ」と語った。日本市場で非上場化が選択肢の一つになっていることは追い風で、上場企業の株式公開買い付け(TOB)や部門や子会社の切り出しなどカーブアウトは「引き続き検討している」と言う。
もっとも、技術承継機構にとって成長を維持するための課題は好条件での買収案件が続くかどうか。アイザワ証の三井氏は、事業を譲り受ける際に見極める目利きがどのように形成され、持続的な考え方として共有されているかが重要だとみている。
新居社長は、工場自動化(FA)センサーなど検出・制御機器大手で、高収益・高年収で有名なキーエンスのマニュアル化など「良い会社を常に学ぼうとしている」と説明。案件の持続可能性については「魔法もないし、明確にこれだけやるというのはないが、毎年コンスタントに譲り受けを積み重ねるしかない」と話している。
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