育児休業取得を昇進・昇格のリスクとしないために

次いで、育児休業が昇進・昇格に与える影響について検討する。

育児休業の取得期間に応じて昇進・昇格が遅れる仕組みとなっている場合、キャリア形成に前向きな女性ほど、出産とキャリア形成との間で葛藤を抱えやすくなると考えられる。

では、企業は育児休業取得者に対して、どのような評価方針を有しているのだろうか。

図表は、昇進・昇格の条件として連続して一定水準以上の評価結果があることを条件としている場合で、当該査定期間中に育児休業期間が重なった者の評価方針を示したものである。

これによると、「特に評価の方針を示していない、定めていない」と回答した企業が27.9%と最も多い。

評価方針が明確に定められていない場合、評価基準や判断プロセスが個別対応に委ねられやすく、評価の一貫性や透明性が確保されにくくなるおそれがある。

また、「育児休業中は評価対象とせず、復職後の期間のみを評価する(直近EFは2期しかないため、次のGの評価を待つことになる)」とする企業も18.7%存在する。

この場合、仮に図表のAの期間において高い成果を上げていたとしても、その直後に育児休業を取得すると、その成果は昇進・昇格の判断に反映されない。

結果として、育児休業の取得が昇進・昇格の時期を後ろ倒しにする構造が生じているといえる。

また、管理職登用の条件として必要在級年数を課す企業も多いが、この在級期間に育児休業期間を含めない制度設計の場合、いかに能力や実績の高い人材であっても、育児休業取得者は同期と比べて昇格が遅れることになる。

このような評価方針のもとでは、キャリア形成に前向きな人ほど、納得感やモチベーションが下がり、人材育成の観点からも非効率な結果を招くおそれがある。

育児休業を昇進・昇格のリスクとしないためには、休業前後の人事評価を連続したものとして取り扱うことや、昇進・昇格に必要な在級年数に育児休業期間を算入することなどの人事評価制度を設けることが望まれる。

年度途中でも入園できる保育所を増やす

次いで、育児休業の望まない長期化を防ぎ、ブランク期間を短縮することで、女性のキャリア形成を促すための自治体に求められる支援について言及する。

子どもは年間を通じて出生するため、子どもが1歳になるまで育児休業を取得できる環境を整えるには、1歳になる時点で入所可能な保育所の確保が不可欠である。

しかし、保育所の入所時期は4月に集中しており、地域によっては年度途中での入所が困難な状況が続いている。

その結果、0歳児の4月入所に合わせて育児休業を早期に切り上げる人や、1歳までは自宅での保育を希望する場合には、1歳になった4月まで入所を待たざるを得ないケースが生じている。

厚生労働省「保育所入所時期の柔軟化に関する調査研究事業報告書(2020年)」によれば、年度後半に子どもが生まれた家庭ほど、希望する時期に入所できない、保育所に入れないために育児休業を延長せざるを得ないなど不利益を抱える傾向が指摘されている。

対策として年度途中の入所を事前に予約ができる「入園予約制」を導入している自治体もあるが、特に待機児童の多い自治体では制度導入が難しく、2019年末時点で「入園予約制」を実施する自治体は全体の4分の1程度にとどまる。

もっとも、保育所の待機児童数は近年、大幅な改善が見られている。

こうした状況を踏まえ、年度途中の入所が可能な保育所を拡充していくことは、育児休業の望まない長期化を防ぎ、就業する母親のキャリア形成を支援するうえで、重要な意味をもつと考えられる。