(ブルームバーグ):日本銀行は28日、2015年7-12月の金融政策決定会合の議事録を公表した。マイナス金利政策に踏み切る直前の時期で、物価目標の実現が見通せない中、政策委員から異次元緩和の限界論も指摘されていた。
黒田東彦総裁(肩書は当時、以下同)が就任直後の13年4月に打ち出した大規模な量的・質的金融緩和政策(QQE)は、14年10月の追加緩和でも2%の物価安定目標を実現できないまま期限とした2年が経過。原油価格の下落や中国を中心とした新興国経済の減速もあり、消費者物価(生鮮食品を除くコアCPI)は0%付近で低迷していた。
日銀がマイナス金利政策に踏み出す直前の15年12月18日の会合では、QQEの補完措置の導入を巡って激論が交わされる。同会合では、国債買い入れの平均残存期間の長期化や上場投資信託(ETF)の新たな買い入れ枠の追加、不動産投資信託(J-REIT)の銘柄別買い入れ限度額の引き上げなどが決まった。
黒田総裁ら執行部を中心とした政策委員は、QQEにおける資産買い入れの円滑化や効果の浸透の観点から、これらの補完措置の導入が望ましいと主張した。中曽宏副総裁は、一連の措置が政策の持続可能性に対する疑念を防ぐことになるとし、「正常化に向けた道筋を付けやすくする」との見解を示した。
3審議委員が反対
石田浩二、佐藤健裕、木内登英の3審議委員は、国債買い入れの残存期間長期化などに反対する。当時は国債保有残高が年間約80兆円増加するペースで購入を続けており、事務方からは大手金融機関の国債売却余力の低下などが報告されていた。
石田氏は、国債購入について「金利とか市場機能の状況を考慮せず買うということであれば、物理的には買えるとしても、中央銀行の金融政策としてあり得ない」と批判。佐藤氏は、幅広い年限の金利がマイナスになれば、買い手は日銀だけになってしまうとし、「まさに財政ファイナンスである」と懸念を示した。
4月会合から国債買い入れの減額や残存期間の短期化などを提案し続けていた木内氏は、将来的な国債保有残高の正常化に支障が出るなど「多くの問題点」を挙げた。これに対して原田泰審議委員は、「自ら限界を作って、だから買い入れに反対というのはいかがなものか」と反論した。
インフレ期待
限界論がある中でも大規模緩和を続けた背景には、インフレ期待など「物価の基調」が着実に上昇しているとの判断があった。目標達成時期を16年度の前半から後半に後ずれさせた10月30日の会合で黒田総裁は、QQEの推進で「物価の基調は着実に高まり、消費者物価は2%に向けて上昇率を高めていく」と自信を示した。
しかし、12月の日銀の全国企業短期経済観測調査(短観)では、企業の物価見通しが9月に続いて鈍化するなどインフレ期待にも変調の兆しが現れる。岩田規久男副総裁は「予想インフレ率の低下に歯止めがかからなければ、金融政策による対応が必要になる」としつつ、主因は原油安であり、物価の基調を見守る段階としていた。
16年に入ると中国経済の悪化懸念などから世界的な株安や円高が進行。市場が大きく動揺し、日銀は1月会合でマイナス金利政策に踏み出す。QQEも継続され、保有国債残高は国内総生産に匹敵する規模に膨らむことになる。植田和男現総裁の下で24年8月から国債買い入れの減額計画がスタートしたが、今なお保有は500兆円を上回る。
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