党首会談での合意文書に記された「早期成立」の文字

国民民主党の玉木代表との党首会談で合意文書に署名したあと、高市総理は今回の決断の理由を次のように説明した。

「私自らが強い経済を構築するという観点から、やはり所得を増やして消費マインドを改善し、事業収益があがる。そういう好循環を実現するために最終的な判断を下した」。

対する玉木代表も「ともに関所を乗り越えることができた。高市総理の政治決断にも感謝と敬意を申し上げたい」と高市総理を称えた。最後のカップインは高市総理が決めたものだった。

ただ、今回の決断に対し政府・与党内からは「あんな結論を想定していた人はいない」(政府関係者)、「国民民主にベタ折れだ」(自民党議員)という声もあがっている。なぜここまで政府・与党は譲歩したのか。その大きな理由の一つが、来年度の税制改正法案と予算案への協力だ。

今回、合意した文書の最後には「来年度の税制改正法案及び来年度予算について年度内の早期に成立させる」との文言が入っている。

玉木代表は「いまの段階でモノ(予算案)もないのに、賛成ということにはならない」としつつも「当然成立に向けて協力していく」考えを示していて、自民党内からは「予算と税に賛成してもらえるということだ」という受け止めが広がっている。

関係者によると、高市総理が合意文書をめぐり小野寺氏と電話した際「あなたはこれで合意すべきだと思うか」と尋ねると、小野寺氏は「税だけでなく予算への賛成は大きい。これは進めるべきです」と答えるやりとりがあったという。少数与党の自民党にとって予算成立が確約されることは、税制で大幅譲歩をしてでも得たい「果実」だった。

国民民主の玉木代表は合意後の会見で「政策を実現したパートナーとは信頼感も深まる。より広く、深くなるのは当然だ」と強調した。

今回の年収の壁を巡る協議で自民党と国民民主党は距離感を一気に近づけた。自民党内には国民民主との連立を前向きにとらえる声もある。今年、連立を組んだ日本維新の会とは「定数削減法案」をめぐって早くも関係にきしみが生じるなか、自民党は再び国民民主との連立を摸索するのか。2年連続で政界再編が起きるか、来年も注目の年になる。

TBSテレビ 報道局政治部 与党担当
島本雄太