今月18日、自民党と国民民主党は来年度の税制改正で焦点の一つだった「年収の壁」を178万円へ引き上げることで合意した。紆余曲折を経て合意に至った今回の引き上げは、自民党側が国民民主党側の主張に大きく譲歩した結果となった。

税制協議を経て親密さが増す両党は来年、連立を含めた新たな協力関係に入る可能性までささやかれているが、その背景に何があったのか。

178万円目指す方針では一致も「先が見えない」・・・迫るタイムリミット

税制協議の最終局面を迎えた今月18日は朝から慌ただしかった。衆院第二議員会館7階にある自民党の小野寺税調会長の事務所は、多くの財務省主税局の幹部でごった返していた。自民・日本維新の会の与党は翌19日に税制改正大綱を決定する段取りで、この日が協議の事実上のタイムリミットだった。残された課題となっていたのが、国民民主が求める年収の壁の178万円への引き上げだ。

小野寺税調会長と古川税調会長

午前9時、国民民主党の古川税調会長が小野寺氏の事務所を訪れ、最終日の協議が始まった。しかし会談はわずか10分。小野寺氏の事務所を後にした古川氏は、不機嫌そうに記者からの問いかけにもほとんど応じなかった。

その1時間後に今度は小野寺氏が古川氏の事務所を訪れたが、こちらも会談は10分。小野寺氏は周囲に「先が見えない。大変だ」とこぼした。

これまでの協議で両党は178万円への引き上げを目指す方針では一致していたものの、隔たりがあったのは「減税効果を大きく受ける層を、どの所得層まで広げるか」という点だ。

国民民主党の玉木氏によると、当初、政府・与党が提示したのは最大の基礎控除を受けられる対象を年収300万円以下とするものだったという。
低所得層に手厚くしたい自民党に対し、国民民主党は中間層も含めた引き上げを求めていて、溝は埋まらない状態が続いていた。

18日中に合意できなければ破談となる。関係者によると昼の段階では国民民主を抜いた各党との合意文書まで作成していたという。協議を重ねる小野寺氏の顔には疲労が浮かび、周囲に対して、ゴルフに例えた表現で交渉の難しさを吐露していた。
「グリーンは見えるんだが、とても届かない」。