人工知能(AI)分野で企業価値が1000億ドル(約15兆7000億円)を超えるスタートアップ企業は、どうやら「ヘクトコーン」と呼ばれているようだ。価値がわずか10億ドルの「ユニコーン」でさえ大いに誇るべき到達点だった時代を覚えている身としては隔世の感がある。当時はもっと単純な時代だった。

2026年、これらAIヘクトコーン各社が新規株式公開(IPO)に踏み切る可能性がある。歴史家に言わせると、その経緯はかつてのドットコム・バブル崩壊の前兆と重なる。

当時は絶望的な収支状況が軽視され、過剰な期待ばかりが先行し、最終的に破綻を招いた。AI企業のIPOも同様に審判の時を迎えるのだろうか。これは私が26年に注目しているテーマの一つだが、気になる課題は他にもある。

コアウィーブの教訓

私は昨年、少しばかり気まずい思いをした。AI向けクラウドサービスを手がける米コアウィーブのIPOによりAI業界の「お粗末な」財務内容を露呈すると警告する記事を書いた3カ月後に、株価がIPO価格(40ドル)の4倍に跳ね上がったからだ。

しかし、四半期決算報告が義務付けられると、投資家は同社の負債額やデータセンター建設の遅れに神経をとがらせるようになった。空売り投資家も水面下で動き出した。数少ない純粋なAI銘柄として、コアウィーブはAIブームの荒波をじかに受けている。足元の株価は、熱狂状態にあった夏のピーク時から約53%下落している。

上場を検討している他のAI企業が、コアウィーブの事例を教訓とすべきかは判断が難しい。有力候補であるアンソロピックとOpenAIは、AIブームの代名詞とも言える存在。それだけに、市場の期待と不安を日々、真っ向から受けることになるだろう。

だが、両社はAIの「スタック(階層)」でコアウィーブとは別の立ち位置にある。つるはしやシャベルではなく、「金」そのものだ。

 

大切なのは資金力

複数の大型上場に向けた準備が進められているが、26年中に実現するかは見通せない。英紙フィナンシャル・タイムズ(FT)は昨年12月上旬、アンソロピックが上場を視野に専門の弁護士と協議していると報じた。非公開での資金調達を進めており、企業価値は3000億-3500億ドルに達するとしていた。

一方、OpenAIも新たな資金調達を計画しており、企業価値は7500億ドルに膨らむ可能性がある。

両社とも、非公開で資金を調達できるという自信を持ち続けている。上場は、情報開示や四半期決算の説明会などに厳しい監視の目が注がれるため、必ずしも手放しで歓迎できる選択肢ではなくなっている。

「上場企業の最高経営責任者(CEO)になることを楽しみにしているかと問われれば、ゼロパーセントだ」。OpenAIのサム・アルトマンCEOは最近、ポッドキャストでこう漏らした。「上場企業になることについては、ある意味、楽しみだが、別の意味では本当に煩わしいと思う」。

それでもなお、最初に上場に踏み切ることで潤沢な資金が得られるかもしれない。そして、競争で先頭を走り続けるために何よりも大切なのは、資金力なのだ。

(筆者デーブ・リー氏はブルームバーグ・オピニオンのコラムニストで、米国のテクノロジーを担当。以前はフィナンシャル・タイムズやBBCニュースの記者でした。このコラムの内容は、必ずしも編集部やブルームバーグ・エル・ピー、オーナーらの意見を反映するものではありません)

原題:‘Hectocorns’ Are Just One AI Flashpoint for 2026: Dave Lee(抜粋)

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