(ブルームバーグ):東京証券取引所はニデック株を「特別注意銘柄」に28日付で指定すると発表した。同社の2025年3月期の有価証券報告書(有報)について、監査法人が「意見不表明」とし、内部管理体制等について改善の必要性が高いと見なされたことが理由だ。特別注意銘柄とは何か、今後ニデックにどういった影響が及ぶ可能性があるのかまとめた。
特別注意銘柄とは
東証が上場会社の内部管理体制などについて改善の必要性が高いと認めた際に、「特別注意銘柄」に指定する。有報の虚偽記載や、適時開示に関わる規定違反があったと判断された場合に、指定される可能性がある。
今回のケースでは、ニデックの25年3月期有報について監査法人のPwCジャパンが意見不表明としていたことを重く見た。東証は発表資料で、過年度決算訂正の恐れも含め、適正な決算内容を開示できていない状態が継続していると指摘する。
また最初の問題の発覚以降、調査の追加を繰り返している上に、現時点でも第三者委員会の調査等の終了時期が不明で、決算スケジュールが正常な状態に回復する見通しも投資家に示せていない点も問題視した。
過去に指定された銘柄は
東証のウェブサイトによると、現行制度になった24年1月以降、これまでニデックを除き5社が指定された。プライム市場に上場するACCESSは不適切会計を行い、21年1月期から数年にわたり決算短信で虚偽記載をしていたことなどが指定の理由とされる。
制度変更前の「特設注意市場銘柄」では、損失計上の先送りをしていたオリンパスが12年1月から13年6月まで指定された。東芝も不正会計問題を巡り、15年9月から17年10月まで指定された。
最悪のケースは
特別注意銘柄に指定されると、原則として指定されてから1年経過後の審査までに内部管理体制などを適切に整備・運用することが求められる。だが、適切に整備されていると認められても、適切に運用されていると見なされなければ、指定が継続され、その後に内部管理体制確認書の再提出が義務付けられる。
最悪の場合、どういう処分があるのか。上場会社の内部管理体制などが適切に整備されるか、適切に運用される見込みがなくなったと東証が認める場合、上場廃止とされる。制度変更前ではあるが、過去に京王ズホールディングスが15年5月に、グローバルアジアホールディングスが15年9月に上場廃止されている。
ニデックのケースでは、情報開示に関する審査などを日本取引所自主規制法人が継続する方針だ。新たな問題が判明した場合には、追加的な措置等を講じる可能性があるという。
経営への影響は
ブルームバーグ・インテリジェンスの本間靖健アナリストは、特別注意銘柄に指定されるということは、「社会的信用力が損なわれることに加え、企業価値・株主価値の毀損につながる恐れがある」と話す。公募増資などの資金調達にも影響を及ぼすと考えられ、企業価値向上のための施策を打つことが困難になる可能性もあると指摘する。
岩井コスモ証券の斎藤和嘉シニアアナリストは、ムーディーズ・ジャパンがニデックの格付け「A3」を引き下げる方向で見直すと発表するなど、借り入れ時に金利が上がる懸念はあるとした。
一方で、ニデックにはハードディスクドライブ向けのスピンドルモーターなどシェアの高い製品もあり、事業活動における影響は軽微だと、斎藤氏は話す。
株価の見通しは
ニデックは第三者委員会を設置して子会社の会計処理問題などを調査中だ。9月には本体やグループ会社の経営陣の関与・認識のもとで不適切な会計処理が行われたことを疑わせる資料が発見されるなど、信用回復に向けた道筋はまだ見えない。
斎藤氏は、明日以降の株価の動きはネガティブになるだけでなく、機関投資家がポジションをもう一段絞る可能性があると指摘した。
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