(ブルームバーグ):米製薬大手ファイザーのアルバート・ブーラ最高経営責任者(CEO)は30日、トランプ大統領が表明していた医薬品関税について、3年間の猶予を得たと明らかにした。米国内で販売する薬価を引き下げる合意の一環としている。
ファイザーは消費者に医薬品を直接販売するサイト「TrumpRx」を通じて、一部の医薬品を平均50%の値引き価格で提供する。これは政府が交渉した割引価格で米国民が処方薬を購入できるようにする取り組みだ。
今回の合意により、ファイザーにとっては2つの大きなリスクが解消されそうだ。まずはトランプ政権の薬価政策による一段の打撃を回避できる。また将来的に課される可能性があった医薬品関税からも保護される見通しだ。
また関税の適用除外を与える代わりに相手から見返りを引き出すというトランプ大統領の交渉スタイルが改めて浮き彫りになった。
関税猶予の発表を受けて、ファイザー株は一時6.5%上昇した。今年は前日までに10%下落しており、S&P500種株価指数の13%高を大きく下回っていた。
今回と同様の合意が今後も出てくる可能性がある。ラトニック商務長官は、大手製薬会社との協議を続けており、輸入医薬品が国家安全保障上の脅威となるかどうかを調べる通商拡大法232条の調査結果を保留していると示唆した。
長官は「これらの企業と話し合いを進めている間は、交渉の行方を見守る」と述べた。
トランプ氏は先週、米国に医薬品製造工場を建設しない限り、10月1日からブランドまたは特許取得済みの医薬品に100%の関税を課すと述べていた。だが、大統領と側近の発言からは、こうした警告が製薬メーカーから薬価引き下げを引き出すための交渉戦術だったことを示唆している。
「来週中に全てやって来る予定だ。我々は全社と合意を進めている。合意に至らなければ追加で5%、6%、7%、8%の関税を課すと伝えた」などとトランプ氏は述べた。
ファイザーはメディケイド(低所得者向け医療保険制度)加入者向けに全般的に薬価を引き下げると述べた。トランプ氏によると、一部の医薬品では「最恵国待遇」価格を適用する。トランプ氏はこれまで米国での医薬品価格を諸外国と同水準に引き下げるよう、製薬企業に繰り返し圧力をかけてきた。
ブーラCEOはこの一環として、米国内に700億ドル(約10兆3500億円)を投じて研究開発と米国内での製造を強化すると発表した。
ファイザーは、どの医薬品をTrumpRxで提供するか明らかにしなかったが、主にプライマリーケア(一次診療)向けの医薬品の大半を対象とすると説明した。同社の主力製品には、血液凝固防止剤「エリキュース」、肺炎ワクチン「プレベナー」、新型コロナウイルス感染症向けの医薬品が含まれる。
トランプ氏は7月にファイザーを含む大手製薬17社に書簡を送付。同書簡でトランプ氏は各社に対し、9月29日までの対応を求めており、従わない場合は「あらゆる手段を講じる」と警告していた。
ホワイトハウスのデサイ報道官は声明で、「民主党が不法移民の医療補助のために政府閉鎖を主張している一方で、トランプ大統領は連邦政府の権限を活用し、一般の米国民の薬価を大幅に引き下げている」と述べ、「民主党は何十年も薬価について口先だけの議論をしてきたが、実際に行動に移しているのはトランプ大統領だけだ」とも主張した。
原題:Pfizer Gets Three-Year Reprieve From Trump Pharma Tariffs (1)(抜粋)
(詳細を加えて全体を更新します)
--取材協力:Skylar Woodhouse、Damian Garde.
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