世界トップ5の目標と立ちはだかる「壁」

しかし、シャオミの前途は決して平坦ではありません。

中国は世界の乗用EV販売の64%以上を占める巨大市場であると同時に、約140社のメーカーがひしめく世界で最も競争の激しい市場でもあります。

販売ランキングを見れば、BYDやテスラといった巨人が百万台レベルで販売する中、シャオミの存在感はまだ小さいのが現実です。

CEOの雷軍氏は、「今後15年〜20年以内に世界トップ5の自動車メーカーになる」という壮大な目標を掲げました。

これを実現するには、中国国外の顧客を獲得することが不可欠です。

しかし、その行く手には地政学的な高い壁が立ちはだかります。

米中間の貿易摩擦が激化する中、EU、アメリカ、カナダ、トルコといった国々は、中国製EVの流入を食い止めるために関税を導入しています。

特にアメリカは、中国製EVに100%という極めて高い関税を課しており、シャオミを含む中国ブランドの参入を事実上、締め出している状況です。

スマホで世界を席巻し、EVで業界を震撼させたシャオミ。

その成功は、雷軍氏というカリスマ経営者のリーダーシップ、明確なエコシステム戦略、そして国家的な産業支援が見事に噛み合った結果と言えるでしょう。

しかし、国内の激しい競争と、国外の分厚い貿易障壁という二つの課題を乗り越えなければ、真のグローバルブランドへと成長することはできません。

シャオミの“EVギャンブル”はまだ始まったばかりです。