インド洋は、その名前が示す通りインドにとって最も重要な海域であり、貿易とエネルギーの大半がこの海を通ります。しかし、この海域の重要性はインドだけにとどまりません。もう一つの巨大国家である中国もまた、インド洋への関心を高めています。中国対インドの海洋覇権をめぐる熾烈な争いは、日に日に激化しています。

小さな島国が争いの舞台に 地政学的な価値が高まる「リトルインド」

中国とインド、2つの大国の争いの舞台となっているのが、モーリシャスのような小さな島国です。

モーリシャスは、美しい白砂のビーチやラグーン、そしてきめ細やかなホスピタリティを持つリゾート地です。

しかし、その魅力は観光だけにとどまりません。

モーリシャスは、インド洋に広がる230万平方キロメートルもの広大な排他的経済水域(EEZ)を保有しています。

これは、モーリシャスが海上貿易の要衝に位置していることを意味し、その戦略的な重要性は非常に高いのです。

モーリシャスの経済はかつてサトウキビ栽培に支えられていました。

しかし、2000年代初頭から中国がモーリシャスに注目し始め、その後を追うようにインドも関心を強めています。

モーリシャスの人々は、インドとの深い文化的・歴史的なつながりから、この国を「リトルインド」と呼んでいます。

中国やインドからの支援は、モーリシャスの経済発展を後押しし、歓迎されています。

しかし、この美しい島の海岸線のすぐ先には、すでに軍事的な動きが見られます。

モーリシャスが統治するアガレガ諸島では、インドが監視航空機用の滑走路を建設しました。

これは、中国の動向を監視することが主な目的だとされています。

一方で、モーリシャスが領有権を主張するディエゴガルシア島には、アメリカとイギリスの軍事基地が1970年代から設置されています。

この基地は、両国の軍事戦略上、非常に重要な拠点です。

大国が世界的な影響力を行使しようとするとき、他国に軍事基地を置こうとするのは自然な流れです。

中国は現在、まさにこの軍事基地のネットワークをインド洋に築き始めようとしています。

これは中国だけにとどまらず、インドのアガレガ基地もまた、インドがこの地域で戦略的な転換を図っていることを示しています。

その背景には、インドの目覚ましい経済成長と、長年にわたる中国との対立があります。