(ブルームバーグ):イーロン・マスク氏のビジネス帝国を支える資金の流れは今、人工知能(AI)に向けて加速している。
マスク氏は13日、最高経営責任者(CEO)を務める電気自動車(EV)メーカー、テスラの株主に対し、同氏のAIスタートアップ「xAI」への出資について採決を実施する意向を表明した。
xAIは2年前に設立されたが、巨額の資金を支出し続けている。事情に詳しい関係者によると、マスク氏の宇宙開発企業スペースXも、xAIに約20億ドル(約3000億円)を投じることで合意したばかりだという。

マスク氏は傘下企業の統合を支持しているわけではなく、テスラ株主にもxAIの成長がもたらす恩恵を受ける機会を提供したいとしている。
xAIは今年3月にマスク氏がオーナーとなっているソーシャルメディアのX(旧ツイッター)に株式交換で統合された際、1130億ドルの価値があると評価された。
xAIは月10億ドルを支出しながら高度なAIモデルの開発に取り組んでいる。対話型AI「ChatGPT(チャットGPT)」の米オープンAIなどと競合する中、マスク氏はグループ企業からの追加投資がxAIの支出抑制にどうつながるかについては説明していない。
xAIはこれまでのところ、大手企業との契約も少なく、開発者にとってもオープンAIや米アンソロピックほどAIセクターで存在感を示していない。
ブルームバーグ・ニュースは先に、xAIは2025年に約130億ドルを支出する見通しで、資金調達が辛うじてそうした支出ペースに追い付いている状況だと報じた。
忠誠心
こうした中で注目されるのが、「イーロン株式会社」とも称される広範な企業群の存在だ。だが、テスラの株主全員が、同社の資金をマスク氏のAI事業に向かわせることを受け入れているわけではない。
xAIのチャットボット「Grok(グロック)」にはリスクもある。グロックのXアカウントは11日、「多くの人々が経験した恐ろしい行為」について長文の謝罪を投稿。過去にアドルフ・ヒトラーを称賛し、ホロコースト(ユダヤ人大虐殺)を「効果的」とした投稿を行ったことについて謝罪した。

テスラの時価総額は約1兆ドルで、評価額世界一の自動車メーカーであり続けているが、販売減少やマスク氏のトランプ政権関与の影響などで株価は年初来で下落している。
ラッファー・テングラー・インベストメンツのナンシー・テングラーCEO兼最高投資責任者(CIO)は「xAIへの投資は、低迷するEV事業をさらに希薄化することになる」としながらも、こうした出資案はテスラ株主に承認される可能性が高いとの見方を示した。
多くの株主が依然としてマスク氏に強い忠誠心を抱いており、テスラが16年に太陽光発電ベンチャーのソーラーシティーを買収した際の株式交換も、訴訟が起こされるなどの反発があったにもかかわらず承認されたという前例がある。
「株主は前向きに捉えるだろう」とテングラー氏は話し、「xAIは今後も評価額を高めていくとみられ、テスラによる出資は株主に参加の機会を与える」と指摘した。
テスラは次の年次株主総会を11月6日に予定しているが、議案説明書はまだ公表されていない。
テスラとマスク氏、同社のロビン・デンホルム会長および投資家向け情報提供(IR)責任者トラビス・アクセルロッド氏はいずれもコメント要請に応じなかった。
原題:Elon Musk Turns to Tesla and SpaceX to Fuel His AI Ambitions(抜粋)
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