「ラグジュアリー」と「ファッション」の違い 明暗を分けた戦略

一方、ルイ・ヴィトンの成功により世界長者番付の頂点に立ったベルナール・アルノーは、グッチとは全く異なる戦略を採用していました。

ルイ・ヴィトンは伝統と格式を守り続けることを選び、LVMHは業界の最古参として揺るぎない地位を築いています。
「ラグジュアリー」と「ファッション」には本質的な違いがあります。

ファッションが流行の波に乗るのに対し、ラグジュアリーは時代を超えて愛され続ける伝統的な商品を大切にします。

エルメスのバーキンバッグはその代表例で、1980年代に生まれた商品ですが、今でも高い人気を誇り、1つのバッグが1万ユーロを超えることもあります。

一方で、ミケーレが手掛けたファー付きローファーやマーモント、ディオニュソスといったグッチの人気商品は、永遠の定番商品となる可能性を秘めていたにもかかわらず、その機会を逃してしまったと指摘されています。

その理由は商品のバリエーションを増やしすぎ、市場に溢れさせてしまったことにありました。

これはケリングの短期的な利益重視の姿勢、すなわち売上と利益の即効性を追い求めた結果であると言えるでしょう。

この違いは株価にも明確に表れています。

投資家はLVMHの予想利益1ドルに対し24ドルの価値を見出す一方、ケリングの予想利益1ドルに対しては15ドルしか価値を見出しません。

これは、トレンドに左右されにくいLVMHの事業に、より大きな将来性を見出しているためです。