グッチ(GUCCI)は単なるブランドではなく、人々が憧れる人生を具現化した存在です。「モールではなく美術館に相応しい」と評されるグッチですが、その華やかなイメージの裏で、近年、急速な業績悪化に直面しています。そのワケとは?

激しい買収合戦の末に…仏・ケリングの傘下に置かれた伊・グッチ

グッチはイタリアを代表するファッションブランドですが、ここ20年間はフランスの巨大企業ケリングの傘下にあります。

ケリングは、ピノー家が率いる時価総額500億ドルの高級ブランド企業で、イヴ・サンローラン、ボッテガ・ヴェネタ、バレンシアガといった名だたるブランドを擁していますが、その中でもグッチが真の主力ブランドとして位置づけられています。

ケリングはフランソワ・ピノーが設立し、数十年にわたる買収によって成長を遂げてきました。

現在、87歳の彼に代わり、息子のフランソワ=アンリが経営を継承しています。彼は女優サルマ・ハエックを妻に持ち、セレブリティとしても知られています。
ケリングの最大のライバルは、ルイ・ヴィトンやクリスチャン・ディオールを所有するLVMHです。

LVMHを率いるベルナール・アルノーと、ケリングのピノー家は、フランスのファッション界における二強として長年激しい競争を繰り広げてきました。

特に1990年代後半には、アルノーがLVMHのためにグッチの買収を目指し、対立が最も激化しました。

当時、グッチを経営していたトム・フォードとドメニコ・デ・ソーレは、アルノーによる買収を避けるため、ピノー氏を救世主として迎え入れました。

ピノー氏はまずグッチの株式の40%を取得し、LVMHとの激しい買収合戦の末、最終的に全株式を手中に収めました。