「ドラッグストア業界の方がAI業界より伸びる」
一見すると直感に反するように思える、この主張。
6兆円を運用する投資ファンド、オービス・インベストメンツ日本法人社長の時国司氏は、ドラッグストア業界には「分かりにくい成長性」があると言います。
そして、これこそが投資で大きなリターンをもたらす秘訣だと語ります。
「分かりにくい成長性」が大きなリターンを生む
時国氏が率いるオービス・インベストメンツは、20年以上にわたってドラッグストア株に投資を続けてきました。その理由は「分かりにくい成長性」にあると言います。
「AI業界とドラッグストア業界、どちらが伸びそうですかと聞かれたら、AIの方が伸びそうと思うかもしれません。しかし、もう一歩進めて分析すると、全然違う絵が見えてきます」と時国氏は語ります。

成長性の高い業界は新規参入者も多く引き寄せます。
例えば、AIセクターが100%成長したとしても、企業数も同様に倍増すれば、1社あたりの成長率は実質的にゼロになってしまいます。
一方、ドラッグストア業界のようにセクター全体の成長率が低くても、企業数が減少すれば、残存企業の成長率は大きく向上します。
「セクターとしての成長性が0%でも、企業数が半分になるとしたら、1企業あたりの成長率は100%になるんですよね」と時国氏は説明します。
IBMとサンドラッグ、27年間の埋められない差
この理論を実証する興味深い事例があります。1998年にサンドラッグ株を購入した場合と、当時の世界トップIT企業であったIBMに投資した場合を比較してみましょう。
「もし1998年にタイムスリップして、サンドラッグとIBM、どちらを買うかと聞かれたら、多くの人はIBMを選ぶでしょう。この20数年間でITがどれだけ革命を起こしたか、我々は知っています。一方、ドラッグストアは大きく変わったイメージはありません」と時国氏。
しかし、実際の結果は驚くべきものでした。

「サンドラッグは当時170円が今日では4421円程度になっていて、約27倍です。一方、IBMはこの27年間で株価5倍程度にしかなっていない」と時国氏は説明します。
IT業界では次々と新規参入者が現れ、IBMのポジションが相対的に低下しましたが、ドラッグストア業界ではそのような激しい新規参入がなく、着実に企業価値を高めることができたのです。