パンデミックで加速した変化と従業員の不満

パンデミックは、スターバックスのビジネスモデルにさらなる大きな変化をもたらしました。

その一つが、モバイルオーダーの急増です。

アプリを使えば、複雑なカスタマイズも容易にできるようになり、利便性は飛躍的に向上しました。

しかし、この変化はバリスタの現場に混乱を招きました。

テイクアウトやカスタマイズの増加は、彼らにとってストレスとなり、十分な人員や設備が整わない中で仕事を回すことに困難を感じ、燃え尽きてしまう従業員も少なくありませんでした。

こうした従業員の不満が噴出したのが、ニューヨークのバッファローから始まった労働組合運動です。

バッファローの従業員たちは、同社で初めて労働組合加入に賛成票を投じ、歴史に名を刻みました。

この組合化の動きは、「良い雇用主」というスターバックスの評判に挑戦するものとして、大きな注目を集めました。

シカゴでバリスタとして働くジル・ガーザ氏は、組合を結成した自身の店舗が、特に夜間の人手不足に悩まされていると語ります。

通常の業務すらままならず、顧客との関係を築く時間もない現状は、シュルツ氏が目指した「サードプレイス」の姿とはかけ離れています。

この組合結成の動きが広がる中、2017年にCEOを退任していたハワード・シュルツ氏が会社に復帰しました。

シュルツ氏は、この動きを自身への批判と受け止め、長年かけて築き上げてきた「従業員に優しい企業」というイメージを守るために、組合との対立姿勢を鮮明にしました。

その後の1年間で、会社は組合を結成した複数の店舗を閉鎖しました。

2023年3月、シュルツ氏が上院委員会の前で証言した際には、従業員たちは会社が団体交渉の場で意図的に時間を引き延ばしていると感じていました。

バーニー・サンダース氏は、スターバックスが「アメリカの現代史上、最も攻撃的で違法な組合潰しのキャンペーンを展開してきた」と非難しましたが、会社側は「断固として法律に違反していない」と反発しました。