(ブルームバーグ):ウクライナとの戦争で厳しい財政状況にあるロシアは、最近の原油高による恩恵をほとんど受けられずにいる。ルーブル高が影響しているためだ。
イランとイスラエルの対立激化を受け、国際原油相場は急伸している。コモディティーの市場価格を公表しているアーガス・メディアのデータによると、ロシア産ウラル原油の価格は6月13日時点で1バレル=60ドル強に上昇。年初からの下落分のうち90%を取り戻している。
しかし、ロシア中央銀行の公定為替レートに基づいたブルームバーグの試算では、海外に原油を販売してロシアの輸出業者が得た収入は1バレル当たり4957ルーブルとなっている。2025年初めと比べて約30%低い水準だ。

ロシア中銀のデータに基づく試算では、ルーブルは対ドルで約23%上昇し、1ドル=78.72ルーブルとなっている。米国の対ロシア政策の雪解けへの期待感や、ロシア中銀が主要政策金利を歴史的な高水準で維持していることなど複数の要因が背景にある。このため、自国通貨をドルにペッグさせているサウジアラビアなど他の主要産油国に対し、ロシアは不利な立場にある。
ウクライナとの戦争で巨額の軍事費を負担しているロシアの財政赤字は今年、当初想定の3倍以上に膨らむ可能性がある。こうした中で、歳入の約3分の1を占める原油と天然ガスがもたらす外貨収入が減少すると、ほとんどをルーブルで行う政府の資金繰りにも打撃となる。

ロシア国営で最大の石油会社ロスネフチの最高経営責任者(CEO)、イーゴリ・セチン氏は先月、中銀の政策はロスネフチの経営状況を考慮しておらず、ルーブルに換算した原油の価値を過小評価していると発言した。
また、現地メディアによると、マントゥロフ第1副首相は19日にサンクトペテルブルクで開かれた国際経済フォーラムで、輸出企業と輸入企業の双方にとって最適な為替水準は1ドル=約100ルーブルだと発言した。
一方で、アナリストはルーブルが昨年のような安値水準に戻る可能性は低いとみている。
フリーダムファイナンスグローバルは調査報告書で「高金利や原油価格の上昇といった外部要因が急激なルーブル安を抑えている」と指摘し、商品価格の再下落とインフレの加速が起きない限り、1ドル=90-100ルーブルの水準には戻らないとしている。
原題:Russia’s Oil Revenue Dented by Strong Ruble as Prices Jump (1)(抜粋)
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