止まらない「現金離れ」~現金の未来を考える

現金流通高は1年で2兆円余り減少

昨年7月3日に20年ぶりとなる新紙幣が発行されてからもうじき一年が経過する。新紙幣発行に伴って「現金」に対する世間の注目度は高まったものの、社会の「現金離れ」はますます進んでいる。

直近判明分である今年5月の現金流通高は前年比1.8%減で19カ月連続での前年割れとなっている。

金額にすると、5月にかけての1年間で2.2兆円の現金が世の中から消えた(すなわち、需要減少を受けて日銀に回収された)ことになる。

紙幣も硬貨も減少中

大きな内訳としては、日本銀行券(以下、紙幣)が前年比1.8%減、貨幣(以下、硬貨)が前年比1.4%減で、ともに前年割れとなっている。

さらに、それぞれを券種・貨種別に見てみると、紙幣では一万円札が17カ月連続の前年割れを記録しており、直近5月の前年比は2.3%減となっている。

一方、五千円札と千円札については、昨年7月に伸びが急伸し、直近5月時点でも各5.5%増、4.0%増と高い伸び率を示している。

五千円札と千円札はお釣りに使用する紙幣であるため(一万円札は使用しない)、昨年7月の新紙幣発行に伴って、「新紙幣をいち早く顧客に渡して喜んでもらいたい」との思いから、事業者が紙幣を引き出したためと推測される。

ただし、両紙幣ともにここ数カ月は伸び率がやや鈍化していることから、世の中に余剰に供給されていた分が回収されつつあると考えられる。

次に硬貨について貨種別の動向を確認すると、各硬貨ともに概ね前年比マイナスで推移しており、減少基調が続いている。

とりわけ、五百円玉は前年比2.6%減と他の貨種と比べてマイナス幅が突出して大きく、速いペースでの減少が続いている。