類似品「デュープ」の影響
多くの企業が、若者の消費が贅沢から体験重視へと変化した恩恵を受けています。
例えば、ルルレモンやアークテリクスのようなアスレジャーブランドの「天猫」(ECサイト)での年間売上は、2024年に急増しています。
さらに、「デュープ」と呼ばれる、高品質な“類似品”がEコマースプラットフォームで盛んに取引されています。
多くの消費者がこうした「デュープ」商品を購入するようになり、見た目は同じで、むしろ控えめな印象を好むためロゴも不要で、はるかに安価に購入できることがその要因です。
この傾向は中国で急速に広まっており、価格表示がなければオリジナルとの違いを見分けるのは困難だと言われています。

「共同富裕」政策の影響と高級ブランドが模索する新たな戦略
もう一つ、重要な要因として習近平国家主席が掲げる「共同富裕」の考えがあります。
これは、富や社会的地位において人々が比較的、平等であることを望む政策です。
この政策の影響で富裕層の消費行動も変化し、贅沢な消費を控える傾向が見られ、高級ブランド離れが進んでいます。
このような状況下で、高級ブランドは今、戦略を転換しています。
彼らが注力しているのは、世界で最も裕福なVIP顧客です。
今でも高級品を買い続ける限られた層に対し、豪華な展示会やショー、さらにはコンサートまで開催するなど、念の入ったアプローチを展開しています。
中国での異常な成長期は終わりを告げ、長く続いた祭りは終演を迎えました。
未完成の旗艦店が、この新しい現実を如実に映し出しています。
世界第2位の経済大国である中国での高級ブランド売上は、2025年も回復の見通しは立っていません。
そのため、LVMHなどの企業は、インド、中東、東南アジアに目を向け、新たな成長の可能性を探り始めています。
中国市場の変貌は、世界の高級ブランド業界に新たな挑戦と機会をもたらしていると言えるでしょう。
